質問者:
中学生
小春
登録番号3343
登録日:2015-08-10
こんにちはアサガオの頂芽が枯れてしまったら極性輸送はどうなるのか?!
いつも参考にさせていただいております。
アサガオの観察を小学校からやっています
今年は花を咲かせるホルモンや成長する為に必要な養分などの輸送について調べています。
わたしの考えは、根の方から上に向かって栄養が運ばれると仮説をたてたのですが、極性輸送を調べたところオーキシンは茎頂部から基部に移動する一方通行だとわかりました。わたしの考えとは逆でした。
根から養分が行くと考え、頂芽から40、50センチくらいの部分より曲げて頂芽を下げて観察したところ曲げた周辺より頂芽に向かって多数のふたごの花芽がみられました。
なぜふたごが出るか?と自分なりの考えをまとめました。
根から輸送された養分が蔓が曲がった事により曲がった周辺にダムのように溜まり、なんらかのきっかけにより決壊して頂芽に向かって一気に流れた事によりその周辺の葉に栄養がたくさん行き渡り、他所よりも栄養満点の状態で花芽を作るホルモンを生成したことにより葉から花芽にたくさんのホルモンが流れふたごの花芽になったのでは??と考えました。
しかし、下を向いている頂芽はなぜかすべて枯れてしまいました(3本中)偶然なのか?この事でわたしなりに考えた仮説は曲がったことにより溜まった養分は一気に流れたけど、その後、曲がっているせいで頂芽に向かって養分が安定供給できなかったのでは?そのせいで頂芽が枯れてしまったのでは?
と考えました。
では、極性輸送とは茎頂部から基部へ向かって一方通行だとしたとき、頂芽が枯れてしまったら根に向かって栄養が供給できなくなるはずです。しかし、頂芽が枯れてしまったり頂芽を切ったりすると側芽が出てまた新しく栄養を供給しようとしますが、それまでの間はどこから養分をもらうのでしょうか?
長文、乱文申し訳ありませんがどうぞよろしくお願いいたします
小春 さん:
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
難しい問題でしたので少し遅れてしまいました。回答はアサガオの開花生理学をご専門の新潟大学 和田清俊先生にお願いしました。つるを人工的に曲げることはアサガオにとっては大きなストレスになると思います。植物にストレスを与えるといろいろな生理反応が起こることが知られています。水不足や栄養不足にするとか、毎日つるを擦るなどのストレスを与えて観察したら面白いかもしれません。
【和田先生回答】
初めに、物質の輸送について考えておきましょう。輸送の方向や仕組みは輸送される物質の種類によって異なります。根から吸収された無機栄養分は根から上部へ、葉で作られた光合成産物である栄養分や花芽を分化させる花成ホルモンは葉から上下双方向へ、茎頂部で作られたオーキシンは基部へのみ輸送されます。これらのうち、オーキシンの輸送だけが極性輸送です。栄養分は茎頂部で作られるものでも極性輸送されるものでもないので、頂芽が枯れることで他の部分への栄養供給が無くなるということはありません。
次に、なぜふたごが出るかを考えてみましょう。登録番号2244にあるように、双子に見えるものの実体にはいくつかの可能性がありますが、いずれにしても栄養条件が良いときに見られるようです。蔓を曲げたことで養分の輸送が滞ったとお考えのようですが、どの程度に曲げたのでしょうか?栄養分は維管束系を通って輸送されますが、蔓を支柱から外して垂れ下がるようにしたくらいではこの輸送は阻害されるとは思えませんし、一時的に輸送を止めたり、頂芽だけ枯れるように栄養分を制限したりするのは難しいだろうと思います。双子の出現は栄養条件と関係があり、蔓を曲げることは栄養分の輸送を阻害しないならば、双子の出現は蔓を曲げることとは無関係に栽培中の栄養条件の変化で起こったか、あるいは、蔓を曲げることは栄養条件にかかわりなく双子を出現させたのかもしれません。三者の間の因果関係をお調べになるとよいと思います。また、蔓を曲げたとき頂芽が枯れたとのことですが、3例だけなので偶然かもしれません。しかし、蔓を曲げて茎頂部を下向きにしてやると、頂芽優勢で伸長を抑えられていた側芽が伸び出すことは実際にあり、オーキシンなどの植物ホルモンが関与していると考えられます。この現象と同じように、蔓を下向きに曲げることで頂芽が枯れることは有り得ることですが、栄養分の輸送ではなく植物ホルモンなどの関与が想定されます。
和田 清俊(新潟大学)
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
難しい問題でしたので少し遅れてしまいました。回答はアサガオの開花生理学をご専門の新潟大学 和田清俊先生にお願いしました。つるを人工的に曲げることはアサガオにとっては大きなストレスになると思います。植物にストレスを与えるといろいろな生理反応が起こることが知られています。水不足や栄養不足にするとか、毎日つるを擦るなどのストレスを与えて観察したら面白いかもしれません。
【和田先生回答】
初めに、物質の輸送について考えておきましょう。輸送の方向や仕組みは輸送される物質の種類によって異なります。根から吸収された無機栄養分は根から上部へ、葉で作られた光合成産物である栄養分や花芽を分化させる花成ホルモンは葉から上下双方向へ、茎頂部で作られたオーキシンは基部へのみ輸送されます。これらのうち、オーキシンの輸送だけが極性輸送です。栄養分は茎頂部で作られるものでも極性輸送されるものでもないので、頂芽が枯れることで他の部分への栄養供給が無くなるということはありません。
次に、なぜふたごが出るかを考えてみましょう。登録番号2244にあるように、双子に見えるものの実体にはいくつかの可能性がありますが、いずれにしても栄養条件が良いときに見られるようです。蔓を曲げたことで養分の輸送が滞ったとお考えのようですが、どの程度に曲げたのでしょうか?栄養分は維管束系を通って輸送されますが、蔓を支柱から外して垂れ下がるようにしたくらいではこの輸送は阻害されるとは思えませんし、一時的に輸送を止めたり、頂芽だけ枯れるように栄養分を制限したりするのは難しいだろうと思います。双子の出現は栄養条件と関係があり、蔓を曲げることは栄養分の輸送を阻害しないならば、双子の出現は蔓を曲げることとは無関係に栽培中の栄養条件の変化で起こったか、あるいは、蔓を曲げることは栄養条件にかかわりなく双子を出現させたのかもしれません。三者の間の因果関係をお調べになるとよいと思います。また、蔓を曲げたとき頂芽が枯れたとのことですが、3例だけなので偶然かもしれません。しかし、蔓を曲げて茎頂部を下向きにしてやると、頂芽優勢で伸長を抑えられていた側芽が伸び出すことは実際にあり、オーキシンなどの植物ホルモンが関与していると考えられます。この現象と同じように、蔓を下向きに曲げることで頂芽が枯れることは有り得ることですが、栄養分の輸送ではなく植物ホルモンなどの関与が想定されます。
和田 清俊(新潟大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2015-08-18
今関 英雅
回答日:2015-08-18