一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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家のユーカリの木にはなぜ虫が?

質問者:   一般   ひで
登録番号3344   登録日:2015-08-10
家の庭にはユーカリの木があります。その木はふつう虫よけとして使われていると思いますが、家の木にはなぜかハチやセミが多く集まってくるのでなぜか教えて下さい。
ひで様

質問コーナーへようこそ。歓迎致します。
今年は谷崎潤一郎生誕130周年記念ということで全集が出たりしていますが、彼に『蓼食う虫』という作品があります。蓼(タデ)はとても苦く不味いとされている植物で、日本では「蓼食う虫も好きずき」とか,「蓼虫苦きを知らず」とかいう諺があるのをご存知かと思います。要するに「十人十色」ということです。
自然界では、ある生物(ヒトも含めて)には毒であっても、他の生物はそれを平気で食べたりもする事は珍しい事ではありません。ユーカリの葉から出る成分は揮発性のモノテルペン類の化合物ですが、その70~80%はシネオールという化合物です。他にピネンとかカンフェンなどもあります。これらは芳香性で、ヒトはアロマテラピー等に利用したりしますが、多くの虫は嫌いらしく防虫効果もあります。しかし、全ての虫がこれらの化合物を毛嫌いする訳ではありません。おそらく日本のハチやセミにとっては、ユーカリの葉の茂みは匂いを嫌って寄り着きたくない場所というよりは、隠れたり、配偶者を誘ったりするのに適しているのでしょう。あるいは、セミやハチにとってはは、放出されているテルペン化合物の濃度は低すぎて不快とは感じないのかもしれません。日本にはいませんが、シタバチの仲間の雄はテルペン類を積極的に集めるようです。このハチはこれらのテルペン化合物を基にフェロモンを合成するといわれています。
ユーカリから放散される揮発性テルペンの量は温度が高い程多い様です。オーストラリアのシドニーの近郊にブルー・マウンテンとよばれる山があって,夏の日など町から遠方を望むとぼんやりうす青く霞んで見えます。これはユーカリの葉から放散されるテルペンによるものです。テルペンは発火性があるので、山火事の原因になるといわれています。(登録番号1920, 2880を読んで下さい)。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2015-08-11
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