一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

カルス

質問者:   小学生   パンパン
登録番号3346   登録日:2015-08-15
 カルスについて自由研究しています。
 輪切りにしたニンジンを冷蔵庫で育てたら、木部と側根が盛り上がり、その後その部分が変化したか?その周辺に丸などのぶつぶつした塊が出来ました。
 切ってみると盛り上がった部分にはニンジンの組織系が見られカルスではないと言えますが、ぶつぶつした部分はカルスではないかと思っています。どうすればカルスだと言えるでしょうか?学校から顕微鏡を借りてきていたので細胞を見てみましたが、他の部分と比べてもどうすれば未分化だと言えるのか分かりません。また、ぶつぶつから芽のような物(取れてしまい生長は確認できませんでした)が出て、双眼顕微鏡で見て自分では芽だと思っていますが、再分化したと言えるでしょうか?
教えてください。よろしくお願いします。
パンパンさん

自由研究でカルスを研究材料にしているのですね。感心です。
ニンジンから細い根である細根が切れると、ぶつぶつに見えますが、今回のパンパンさんの見ている部分は、この細根の痕ではないと考えて答えます。
カルスの定義は未分化な細胞塊です。この「未分化」を形態学的に区別することは極めて難しいです。特に、初期のカルスは小さく顕微鏡で判定することも困難です。細胞分裂が活発になって細胞が増殖している(細胞数が増えている)様子だけでは、側根が生えてくる側根原基の形成や傷の修復のための細胞増殖の可能性もあり、カルスと明確に区別することは難しいです。

ただ、細胞の増殖が止まらずに、周囲の組織から盛り上がり、そのまま未分化な細胞塊になれば、カルスである可能性が高いと言えます。カルスは傷がついた組織や側根が形成される部分からも形成されやすいです。特に、木部と接した内鞘細胞からカルスが形成される場合もありますので、パンパンさんが「木部と側根が盛り上がった」後に細胞塊ができたという観察結果はカルスである可能性が高いと思います。
我々、カルスの研究者も、顕微鏡による形態データだけでは判定が難しいので遺伝子マーカーを使って判定しています。

パンパンさんが観察した「ぶつぶつ」から芽がでてくれば、芽が再分化したことになります。そうであれば「ぶつぶつ」はカルスである可能性が高いと思います。
芽である一つの特徴は緑化です。根の細胞には葉緑体が含まれていませんから「芽」と思われる組織が緑色になっていれば、一つの指標になると思います。

正確には、中学生になって無菌操作(カビやバクテリアが入らないように実験すること)ができるようになって、「ぶつぶつ」を直接、再分化用の寒天培地においてみて、芽が分化するかどうか確認するとわかると思います。
東京理科大学理工学部、JSPP広報委員長
松永 幸大
回答日:2015-08-15