一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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オジギソウはどこで臭いを感じるのですか

質問者:   小学生   じゅんじゅん
登録番号3350   登録日:2015-08-17
 夏休みの宿題でオジギソウの研究をしています。
どんな刺激で葉を閉じるかいろいろ試していました。
臭いによる刺激で葉が閉じるか実験してみました。オジギソウにビニール袋をかけて、香水、消毒液(エタノール)、アンモニア水を含ませたコットンをその中にいれました。
 香水、消毒液では変化はありませんでした。オジギソウでは葉を閉じて、葉柄がたれました。
なぜ、アンモニア水には反応したのですか。
 そして、オジギソウはどの部分で臭いを感じたのですか? 
じゅんじゅん様
みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を神戸大学の三村徹郎先生にお願いいたしましたところ以下の様な回答をお寄せ下さいました。少し難しいところがあるかも知れませんが、もしあったら遠慮せずにこのコーナーに質問して下さい。

【三村先生からのご回答】
オジギソウは、一般に動かないものとされている植物の中にあって、触っただけでみるみる運動が起こるとても面白いもので、好奇心をそそられますね。
どうして、臭い(匂い)による刺激をしてみようと思ったのか判りませんが、オジギソウも私たち人間と同じ生き物ですから、臭いに反応してもおかしくはないでしょう。
私たち人間が臭いを感じる場合は、鼻の奥に嗅覚細胞というものがあり、そこで臭い物質を吸着して脳にその情報を伝えるため、私たちは臭いを嗅いだと感じることができると考えられています。
香水は、そのような物質を含んでいて、それで良い匂いがすると考えられます。この場合は、匂い物質を吸着して脳に情報を伝える仕組みがなければ、匂いとは判りません。オジギソウは、動物のような匂い物質を吸着する仕組みを持っていないので、香水には反応しなかったと考えられます。
一方、エタノールとアンモニア水は、より直接的に全ての細胞に働きかけることができます。動物細胞だけでなく、植物細胞にも同じように働きかけることができます。
動物や植物の細胞は、(少し難しいですが)細胞膜という脂を主成分とするものに囲まれています。エタノールとアンモニア水は、どちらも、この膜を自由に通って、細胞の中に入り込むことができます。細胞の中に入ったエタノールやアンモニア水は、細胞の中の仕組みに働きかけて、色々な影響を与えます。
あなたの実験で、エタノールでは変化はなかったが、アンモニア水では葉を閉じて葉柄が垂れたのは、
 ・消毒液に含まれるエタノールの量が少なかったため、揮発した量だけではオジギソウの細胞に影響が出なかったということと、エタノールは毒性(細胞に働きかける力)が弱い(お父さん達が飲むお酒にもたくさん含まれています)ので、アンモニア水に比べて反応が少なかったと考えられます。
 ・アンモニア水に含まれているアンモニア(ガス)も、市販のものは薄められていますが、ごく少量で細胞膜に強い影響を与えるため、オジギソウの葉を閉じさせたものと考えられます。アンモニア水を、どんどん薄めていけばオジギソウも反応しなくなるでしょう。この時、まだあなたの鼻はアンモニア水の臭いを感じることが出来るかどうか、オジギソウと競争してみると面白いかもしれません。

上に述べたように、エタノールとアンモニア水は、全ての細胞に働きかけることができますから、オジギソウに、エタノールやアンモニア水の臭いを感じる特別な場所がある訳ではありません。
オジギソウの運動は、葉や葉柄の根元にある少し膨らんだ部分(葉枕とよばれています)で起こることが判っています。この部分の細胞にアンモニアが働きかけて、運動を引き起こしたと考えられます。従って、この部分で臭いを嗅いだと言っても間違いではないかもしれません。

 三村 徹郎(神戸大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2015-08-21
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