一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉っぱの性質

質問者:   会社員   葉っぱのこと
登録番号3354   登録日:2015-08-24
水溶液の性質をはかるpH計で、葉っぱの表面にたまっていた雨をはかりました。pH4.9くらいだったので酸性雨なのか?と思いましたが、そもそも葉っぱに少なからず影響を受けていると思いました。よくある緑の植物ですが、葉っぱの性質はご存じでしょうか?
葉っぱのこと さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は、「葉の表面にたまっていた雨水」のpHを測定したら酸性(pH 4.9)だったので葉から何らかの酸性物質が供給されたのではないかとの疑いを持たれたものです。雨水に空気中の二酸化炭素が十分に溶け込むとpH 5.6になりますので、別の酸性物質の混入を考える必要があります。考慮しなければならないことがいくつかあります。①葉にたまった雨水とは、例えばサトイモやハスの葉にたまる水滴のように葉表面をころころ転がる状態のものか、葉全体が濡れるような状態のものか、もし後者ならどうやって収集したか、②葉の状態、若い元気な葉か、十分に成熟した葉か、③測定した葉表面の雨水は葉についてからどのくらい時間が経過しているか、などです。測定法は重要な点ですがここでは問いません。用いた測定器を正しく補正し、正しい方法で測定した結果と理解します。
サトイモやハスの葉のような葉にたまった水滴で、雨後すぐに集めたのであれば、空気中の酸性物質の存在を考える必要がありそうです。葉全体を濡らした水で、濡れている時間が1,2時間以上経過したものであれば、葉が原因となる酸性物質が溶けこんだ結果と考えられます。
植物の表面にはたくさんの微生物が生息しています。葉、特に成熟した葉も例外でなく糸状菌、酵母、細菌が生息しています。これらの微生物の多くは病原性がなく葉からわずかに分泌される、あるいは死んだ細胞に由来する炭水化物、アミノ酸類などを栄養源としています。微生物は代謝産物としてアルコール類、有機酸(たとえば乳酸)などを産生しています。これらの微生物代謝物は結果として病原微生物の繁殖を妨げているので表面微生物の存在は防御機構の一つと考えられているばかりでなく、近年ではこれらの微生物相の存在が植物側に有利に働いている証拠が出されています。このような葉の表面に雨水が接触して表面を濡らすと、産生されていた微生物代謝物は溶け込みますし、また十分な水が与えられたので微生物の活動も活発になり、その代謝産物産生も多くなります。そのため、葉を濡らした水のpHは酸性側に傾くことになります。サトイモやハスの葉は表面に細毛がたくさんあるため雨水は細毛に遮られて細胞表面に直接触れることがなく水玉となりますので、葉面微生物の産生物を含む可能性が低いことになります。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2015-08-26
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