一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の徒長と病害虫への抵抗性との関連性について

質問者:   会社員   南
登録番号3361   登録日:2015-09-04
トマトの栽培をしています、農業関係の会社で働いているものです。
トマトを栽培するときに病気に強い植物体をつくるには徒長させてはならないと聞きますが、徒長するとなぜ弱くなるのか、そのメカニズムがいまいち良くわかりません。
植物の徒長と病害虫への抵抗性との関連性について教えて下さい。

茎の伸長はもともとある小さな頂芽分裂組織の体積が増大することによって起き、伸展しすぎると細胞壁が薄くなるため病気にかかりやすくなると思って良いのでしょうか?

また、徒長には
光量の不足で起きる徒長、
DIFが大きいときに起きる徒長、
植物ホルモンによって引き起こされる徒長、
R、FR比が小さいときに起きる徒長などがあると思いますが
これらの徒長は全て同じように病気に弱い植物体をつくるのでしょうか?
また、肥料過多による徒長はどうでしょうか?

宜しくお願いします。

南 さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
私たちの生活における健康な体と健康でない体とを比べてみると、健康でない体の人は病気になりやすいですね。健康でない体になることの原因はたくさんあります。徒長してない植物と徒長した植物との関係も同じです。徒長した植物は健康な植物ではありません。植物の病害抵抗性は侵入する病原菌を感知し、対抗する一連の生化学反応が起こることで保たれています。つまり、エネルギーを使った積極的な反応です。健康でない人が病気になりやすいことと同じように健康でない植物もこれらの一連の病害抵抗反応が十分に働かないために病虫害を受けやすいことになります。病害抵抗反応は1つの経路ではなく、病原菌の違い、感染初期に使われる作動因子の違いなどによっていろいろな経路がありますが、共通することは前記したような一連の生化学反応が作動することです。健康でない徒長した植物は、健康度(徒長度)の具合によってさまざまな状況を示すことになりま
す。
徒長の原因はご指摘のようにいくつかありますが、施設栽培などでの一番大きな要因は光質と考えてよいかと思います。原因の如何を問わず徒長植物の特徴は細胞成長の速さに見合うだけ体物質生産にかかわる生化学反応が追い付かないために、細胞、組織の構造、組成が軟弱になることです。過剰のジベレリン投与による徒長と、光質の変化(たとえばR/FR比の減少)による徒長の違いを、同一植物種で比較した例は見つかりませんでしたが病害抵抗性発現については基本的に同じ(健康体には劣る)とみてよいでしょう。
この質問コーナーには「徒長」「病害抵抗性」をキーワードとしたQ/Aがたくさんありますのでご参照ください。本質問と関連したものもあります。ご参考になることでしょう。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2015-09-09
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