一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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種の色の理由

質問者:   会社員   sssss
登録番号3368   登録日:2015-09-13
庭で植物を育てており、よく種を採取するのですが、植物の種は黒や茶といった色が多いように思われます。
植物の花の色は世の中多様にありますが、種の色はほとんどが一緒であり、不思議に感じました。
黒や茶にすることで、植物にとって何かメリットがあるのでしょうか。(例えば温度を上げて発芽しやすいなど)
sssss様

質問コーナーヘようこそ。歓迎致します。sssssさんがおっしゃるように、種皮の色は一般に花の色に比べて確かに地味です。何故だろうかと改まって考えると不思議ですね。どんな植物もその形態や色などは適当に出来た訳ではなくて、長い進化の過程でその生育環境に最も適する形で発達して来たものだと考えて良いでしょう。そうすると、どんな形にしろ色彩にしろ、それらはその植物の生育、生存、繁殖の上で何らかの意味を持っているはずです。あるいは持っていたものの名残であるかもしれません。植物の生活環(史)において、種子はその植物の繁殖、つまり次世代に生き延び栄えていく事が出来るかの重要な一段階です。自然界ではそのために、植物は出来るだけ沢山の種子を作り、出来るだけ遠くへ播布する手だてを講じます。また種子がちゃんと生き残って発芽できるようにも手だてを講じています。そのために種子には様々な形がありますし、その堅さも一様ではありません。しかし、種皮の基本的役割は決まっています。つまり、内部の幼胚を保護する事です。
さて、肝心の種皮の色のことですが、それを構成する色素は種子の種類によって異なりますが、主な物質はポリフェノールと呼ばれる一群の化合物に属する色素です。これらの色素にはいわゆる抗酸化作用があるため,種子の発芽能力を守る働きがあるのではないかともいわれています。また、スイカのある品種を用いた研究では種皮の色の濃い方が薄い種子より種子としての品質が高いとか、アカツメクサでは黄色の種子の方が活力の高い高品質であるとか報じている論文もあります。しかし、色それ自体の役割を研究した例は殆ど無いようで、一つだけ、カリフォルニアに生育するマメ科の植物、Acmispon wrangelianus (Fisch. & C.A. Mey) D.D.Sokoloff (Lotus wrangelianus) についての論文が見つかりました。簡単に結論をいうと、種皮の色をその植物が生育する土壌環境と紛らわしいようにカモフラージュすることで、食害から守られているという事です。この種類の生態学的研究は実験が難しいので何とも言えませんが、種皮の色や模様が積極的な意味を持つとしたら、あり得ることだと思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2015-09-17
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