一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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なぜ成長点は先端にあるのか?

質問者:   教員   みみ
登録番号3370   登録日:2015-09-15
植物の成長点は、なぜ根や芽の先端にあるのでしょうか?なぜ、植物すべての部分で成長するのではないのでしょうか?生徒に質問され調べてみたのですが、分からなかったので教えていただきたいです。よろしくお願い申し上げます。
みみ様

みんなのひろばへのご質問ありがとうございます。なかなか難しい質問ですが、東京大学の塚谷裕一先生に回答をお願い致しましたところ、以下の様な丁寧なご回答をお寄せ下さりました。お役に立つと思います。

【塚谷先生からのご回答】
みみ様
ご質問ありがとうございます。
なぜ先端で成長するか、ですね。
「なぜ」の捉え方によって答はいろいろに答えられますが、体の役目や仕組みで答えると、以下のようなことになります。
まず植物は、細胞壁を持っているために細胞が移動しません。カエルの卵割の話でもおわかりのように、動物は、細胞が体の中を移動できます。ところがそれが植物ではありませんから、体を作っていく際には、積み木式に体を作るほかありません。体の至る所で細胞を増やしたりしたら、細胞壁があって細胞同士がきっちりくっついてしまっている植物の場合、よほどうまくやらないと既存の組織を壊してしまいます。ですので既存の体の構造を壊さずに大きくなるとすれば、先端から新しい細胞を供給して、既存の体の上に新しい組織を積み上げていくのが自然なやり方になります。
その上、地上部の体は、基本的に光合成をするための構造です。ですので光がよく当たるところ、つまり上方に向けて成長することが運命付けられています。その意味でも、若い組織ほど上にできる成長様式は好適です(古い葉は新しい葉の下敷きになってやがて光が当たらなくなるが、新しい葉は常に古い葉よりも上にできる)。
しかし一方で、根はかならずしもそうではありません。1つ1つの根はたしかに先端から積み木式に細胞を供給しながら成長するわけですが、根は地上部に比べて盛んに枝分かれします。これは既存の根の組織を突き破ってできてきます。また地上部と違って、側根を出す位置に制約はありません。その意味では、先端のみならず、全体で大きくなることが可能な状態と言えます。
また樹の幹が太る際も、先端ではなく幹の周囲全体に、形成層という細胞分裂が活発なところがあって、これによって全体に太っていきます。この場合、樹の幹の皮は破れたり剥がれ落ちたりします。既存の体を壊しながらの成長ですね。
このように、植物の地上部は、基本的には先端で大きくなるわけですが、それは光を求めての習性のようなものが背景にあると言えます。根、あるいは幹などはそれとは事情が少し違うので、やや違った成長をしているというわけです。

 塚谷 裕一(東京大学大学院理学系研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2015-10-07
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