質問者:
大学生
ジグザグ気分
登録番号3371
登録日:2015-09-15
いつも楽しく本コーナーを読んでいます。みんなのひろば
ジグザグした根について
さて、先日、実家のアサガオの枯れた残骸を撤去していたところ、根の形状が異なるもの(下記)がいくつかありました。
特徴
①主根・側根とも細かく激しくジグザグに伸びていました。
②地上部の生育、及び根の分岐は正常のものと変わりませんでした。
調べたところ「不定根」というものに似ていますが、ネット画像で見る限り、不定根なるものは茎から伸び、かつ、ジグザグしていないように見えます。
この「ジグザグ」の原因は何なのでしょうか?
とても気になるのでよろしくお願いします。
ジグザグ気分さま
みんなのひろばへのご質問有り難うございました。頂いたご質問の回答を根の生長に詳しい神戸大学の深城先生にお願い致しましたところ、以下の様な回答をお寄せ下さいました。ジグザグの根の写真があればもっと回答が易しかったと思いますが、写真の無い中で頑張って下さいました。生化学の学生さんとのことですが、これから研究者になられるのでしたら、得られた結果は出来るだけ詳しく記録するようにしましょう。まさかジグザグアサガオの種子を捨てたりはしていないでしょうね。深城先生が薦めておられるよう種子を播いて出て来たアサガオの根の観察をして下さい。
【深城先生のご回答】
アサガオの根に関する興味深いご質問をありがとうございます。ご質問の文章にあるように、アサガオの枯れた残骸の中に、根の形状が主根・側根とも細かく激しくジグザグに折れ曲がった形をしたものがいくつかあったということですね。実際の枯れたアサガオの根の様子を見てみないと「ジグザグ」の度合いがわかりませんが、「地上部の生育、及び根の分岐は正常のものと変わりませんでした。」ということですので、あるアサガオ個体の根がすべてジグザグした主根・側根を持っていて、周囲には主根・側根ともジグザグに折れ曲がらずに普通に伸びる根を持つ個体もあったということでしょうか。あるいは、同じ個体の根でもジグザグの根の部分ととそうでない根をもつ部分があった可能性もありますね。どちらかによって考えられる可能性が変わってきますが、「ジグザグ」という表現から想像できることをお答えいたします。
一般に地下部の根の成長はさまざまな要因によって影響を受けます。たとえば、根の成長の速さや向きは、光、重力、接触、温度、水分、無機塩類などの無生物的な環境要因だけでなく、土壌微生物や他植物の根系など生物的な要因などによっても影響を受けます。真正双子葉植物であるアサガオの場合、適度の水分と空気を含み、根が貫入できる程度の堅さの土壌であれば、主根はまず重力方向に伸長し、やがて主根から多くの側根を側方に形成することによって根系を発達させます。しかし、一般に土壌中に根が貫入できないくらい非常に堅い部分があると、根はその部分を回避するような成長パターンを示します。
たとえば、モデル植物であるシロイヌナズナの場合、垂直に立てた寒天培地の上であれば、主根は培地の表面に沿って重力方向に伸長します。一方、寒天培地(根が貫入しない堅さの寒天)を斜めに傾けて(たとえば45度)生育させると、主根はジグザグとはいかないまでも寒天面で細かく波形をつくりながら成長します(波形伸長)。これは根の先端が重力方向と堅い寒天面との接触刺激を感知しながら成長した結果と考えられています。今回、ご実家でアサガオをどのような条件と環境で生育されたのかわかりませんが、アサガオを生育させた土壌中に根が貫入できないほどの堅い土壌の層が斜め方向に存在していたとすると、その場所で生育したアサガオの主根や側根は波形を細かくつくりながら伸長する可能性があります。この場合、そうしてできた根の波形の形状が枯れて乾燥した後に、ジグザグの形状として残ったのかもしれません。もちろん、波形の根の伸長に接触や重力以外の要因が関係する可能性もあるかもしれず、これだけで説明はできないと思われます。
また、これとは全く異なる可能性として、あるアサガオ個体の根が土壌や環境の影響とは無関係にジグザグした主根・側根を持っているのであれば、根の成長パターンに影響を及ぼすなんらかの突然変異を持っていた可能性があります。もしこの根の形状を示したアサガオ個体から収穫した種子があれば、次の世代のアサガオがジグザグに折れ曲がった根の形状を示すかどうかを調べてみてはいかがでしょうか。
普段、私たちが目にすることのない土の中で、植物の根や地下茎が、どのような仕組みで環境に応答しながら増えて成長するのかは、まだ解明されていません。「ジグザグの形状の根」はそういった仕組みの研究のきっかけになるかもしれませんね。
深城 英弘(神戸大学)
みんなのひろばへのご質問有り難うございました。頂いたご質問の回答を根の生長に詳しい神戸大学の深城先生にお願い致しましたところ、以下の様な回答をお寄せ下さいました。ジグザグの根の写真があればもっと回答が易しかったと思いますが、写真の無い中で頑張って下さいました。生化学の学生さんとのことですが、これから研究者になられるのでしたら、得られた結果は出来るだけ詳しく記録するようにしましょう。まさかジグザグアサガオの種子を捨てたりはしていないでしょうね。深城先生が薦めておられるよう種子を播いて出て来たアサガオの根の観察をして下さい。
【深城先生のご回答】
アサガオの根に関する興味深いご質問をありがとうございます。ご質問の文章にあるように、アサガオの枯れた残骸の中に、根の形状が主根・側根とも細かく激しくジグザグに折れ曲がった形をしたものがいくつかあったということですね。実際の枯れたアサガオの根の様子を見てみないと「ジグザグ」の度合いがわかりませんが、「地上部の生育、及び根の分岐は正常のものと変わりませんでした。」ということですので、あるアサガオ個体の根がすべてジグザグした主根・側根を持っていて、周囲には主根・側根ともジグザグに折れ曲がらずに普通に伸びる根を持つ個体もあったということでしょうか。あるいは、同じ個体の根でもジグザグの根の部分ととそうでない根をもつ部分があった可能性もありますね。どちらかによって考えられる可能性が変わってきますが、「ジグザグ」という表現から想像できることをお答えいたします。
一般に地下部の根の成長はさまざまな要因によって影響を受けます。たとえば、根の成長の速さや向きは、光、重力、接触、温度、水分、無機塩類などの無生物的な環境要因だけでなく、土壌微生物や他植物の根系など生物的な要因などによっても影響を受けます。真正双子葉植物であるアサガオの場合、適度の水分と空気を含み、根が貫入できる程度の堅さの土壌であれば、主根はまず重力方向に伸長し、やがて主根から多くの側根を側方に形成することによって根系を発達させます。しかし、一般に土壌中に根が貫入できないくらい非常に堅い部分があると、根はその部分を回避するような成長パターンを示します。
たとえば、モデル植物であるシロイヌナズナの場合、垂直に立てた寒天培地の上であれば、主根は培地の表面に沿って重力方向に伸長します。一方、寒天培地(根が貫入しない堅さの寒天)を斜めに傾けて(たとえば45度)生育させると、主根はジグザグとはいかないまでも寒天面で細かく波形をつくりながら成長します(波形伸長)。これは根の先端が重力方向と堅い寒天面との接触刺激を感知しながら成長した結果と考えられています。今回、ご実家でアサガオをどのような条件と環境で生育されたのかわかりませんが、アサガオを生育させた土壌中に根が貫入できないほどの堅い土壌の層が斜め方向に存在していたとすると、その場所で生育したアサガオの主根や側根は波形を細かくつくりながら伸長する可能性があります。この場合、そうしてできた根の波形の形状が枯れて乾燥した後に、ジグザグの形状として残ったのかもしれません。もちろん、波形の根の伸長に接触や重力以外の要因が関係する可能性もあるかもしれず、これだけで説明はできないと思われます。
また、これとは全く異なる可能性として、あるアサガオ個体の根が土壌や環境の影響とは無関係にジグザグした主根・側根を持っているのであれば、根の成長パターンに影響を及ぼすなんらかの突然変異を持っていた可能性があります。もしこの根の形状を示したアサガオ個体から収穫した種子があれば、次の世代のアサガオがジグザグに折れ曲がった根の形状を示すかどうかを調べてみてはいかがでしょうか。
普段、私たちが目にすることのない土の中で、植物の根や地下茎が、どのような仕組みで環境に応答しながら増えて成長するのかは、まだ解明されていません。「ジグザグの形状の根」はそういった仕組みの研究のきっかけになるかもしれませんね。
深城 英弘(神戸大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2015-09-29
柴岡 弘郎
回答日:2015-09-29