一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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なぜ青い花は少ない?

質問者:   会社員   sssss
登録番号3377   登録日:2015-10-09
世の中様々な花の色がありますが、青色の花は少ないように思われます。例えば、バラ、カーネーション、チューリップ、ダリアなどは青色の花が自然には存在しません。
花の色は昆虫のためにあり、昆虫は青い色が見えないのではないかと考えて調べましたが、そうでもないようです。なにか他に生態学的な理由があるのでしょうか。
一方で、高山帯に生える植物では、青色の花が比較的多いように思われます(思い込みかもしれませんが)。高度によって、花弁が青いことのメリットデメリットが変わるということなのでしょうか。
sssssさん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
花の色素はたくさんありますが、赤、紫、青の色素の多くはアントシアニンで、青色はデルフィニジン系によるものが殆どです。アントシアニンはアントシアニジンに糖がついて水溶性になったものです。発色のもとはアントシアニジンで、基本構造上の水酸基の数によってペラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジンの3系統があります。ペラルゴニジンは橙色系、シアニジンは赤色系、デルフィニジンは青色系の発色をします。ところが私たちにごく身近なバラやカーネーション、キクの仲間にはデルフィニジンを合成する酵素遺伝子が無いために青色系統の花が咲かないのです。チューリップの場合は少し違い、デルフィニジンは合成できるのですが深い青色になるためには鉄が必要で、花弁では鉄イオン運搬体
の働きが十分でなく青色になりえないけれども、鉄運搬体を強制的に働かせると青色になることがわかっています。しかし、周囲をよく見渡せば、キキョウ、リンドウ、ツユクサ、アジサイ、ワスレナグサ、キュウリグサ、など青色の花を咲かせる植物は結構ありますね。実際に青の花色を示す物質はデルフィニジン本体だけではなく、これに糖、有機酸、アルミニウム、マグネシウム、鉄などの金属が複雑に結合して深みのある青色を出しています。青いアジサイを咲かせるためにはアルミニウムを与える必要があるとされています。さらに色素が蓄積する細胞内の液胞のpHによってアントシアン系の色は変化します。青いアジサイもしばらくすると赤色系に変わるのはpHの変化によるものです。また、青色はデルフィニジン系だけでなく、シアニジン系の分子にフラボン、鉄、マグネシウムなどの金属が組合わさって青色色素となっている例もあります(ヤグルマギク)。
高山帯に生育する植物に青色が多いのか目立つのか難しいところです。紫と青との区別も微妙な花がありますね。しかし、一般には色素量が多く濃い色の花が多いのは確かです。アントシアンやフラボンはいわゆるポリフェノールで活性酸素を消去する働きがあります。紫外線はアントシアン、フラボンの生合成を促進します。高山帯は紫外線が強く活性酸素生成が多くなるのでその害を消去するために色素量を多く合成すると解釈されています。青色の花に限ったことではなさそうです。どんな花色素を合成するかは植物種の固有の働きですが環境の変化によって色素量などを調節して無駄なく生存を図っていると考えられます。
登録番号2669はご参考になると思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関  英雅
回答日:2015-10-13
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