一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

複葉の形態について

質問者:   大学生   やまざき
登録番号0338   登録日:2005-08-12
はじめまして,こんにちは.植物の葉のかたちの決定に興味があり,色々調べています.
そこで,複葉のかたちについて,いくつか分からない事があるので.お教え下さい.

弱光下などでは葉柄が長くなって効率的に受光するような仕組みがあるようですが,複葉の場合は葉軸などの長さも変わるのでしょうか?
また,光の強さによって葉のかたちが変わるのは光合成量の違いによって引き起こされるのでしょうか?

これらの事に関して専門的な物でも良いので,文献や資料等をお教え頂けると幸いです.

よろしくお願いします.
やまざき 様 

暑い毎日が続きますが、お元気のことと思います。

 葉のかたちについてご興味をお持ちのようですが、現在、この分野は最も盛んに研究されている植物科学分野の一つです。葉はご質問にある様に、基本的には光合成を効率よく進行させるため受光量をできるだけ大きくするようデザインされています。受光量は葉のかたちも重要な因子ですが、分枝、葉序、葉の角度などによっても大きく影響を受け、これらが総合的に最適化されて、受光量が最大(最適)になると考えられています。これらの面については次の書籍が適当な参考書になるでしょう(第3章1.pp.92-106、など)。

渡辺 昭、篠崎一雄、寺島一郎(監修)植物の環境応答―生存戦略とその分子機構―、秀潤社(1999)。

 一方、葉の基本的なかたちは種によって遺伝的に決まっていますが、これがどのような遺伝子によって決定されているかなどの、興味深い点については次の書籍の第2章、2a、2b、pp.103-127に記載されています。複葉についても記載されています。

岡田清孝、町田康則、松岡 信(監修)[新版]植物の形を決める分子機構―形態形成を支配する遺伝子のはたらきにせまるー、秀潤社(2000)。

 お尋ねの、光強度によって葉のかたちなどが変化して総合的に受光量を最大(最適)にしている細胞シグナルが何であるかは、現在、ほとんどわかっていません。受光量が低くなり、光合成産物の量が低下しそれがシグナルとなって、受光量を増加させるように葉のかたちなどを変化させる、とするアイデアは一つのすばらしい可能性と思いますが、証明が必要です。

 上の書籍にも執筆され、葉や花のかたちについて詳しく研究されている基礎生物学研究所の塚谷祐一先生が書かれた次の書籍も植物のかたちを考える上で参考になると思います。
塚谷祐一 植物の見かけはどう決まる(中公新書)
     植物のこころ(岩波新書)
JSPPサイエンスアドバイザー
 浅田 浩二
回答日:2009-07-03
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内