一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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収縮根について

質問者:   大学生   slime
登録番号3390   登録日:2015-11-10
ユリやアヤメなどに見られる収縮根と呼ばれる根に関しての質問です。
これらの植物の球茎は地上へシュートを出して花をつけ、地下では元の球茎よりも上に新しい球茎を作り、その際に子球茎や子鱗茎が地上に出ないよう下方に引き下げる働きがあるという事を知ったのですが、具体的に子球茎や子鱗茎がどのようにして下方に引き下げられるかの仕組みがわかりません。
この仕組みに対しての回答をお願いいたします。
slime様

みんなのひろばへのご質問ありがとうございました。
収縮根の役割についてはご質問の中に書かれていますので繰り返さず、ここでは根が縮むところの観察から始めましょう。土の中では観察しにくいので、ヒヤシンスなどの根が縮む植物を水栽培して根を観察します。根が縮んで来たことは、根の表面に横皺が出来て来たことで分かります。根の中のほうの組織(皮層)が縮んだのに表皮が縮めないことで出来た皺です。
ここで実験です。縮み始めた根を高塩濃度の液につけます。皺が消えて来ます。縮み始めた皮層の細胞が元に戻ったのです。この実験で根が縮むのは皮層の細胞が吸水することによって起きていることが分かります。普通の植物の根の皮層細胞では細胞壁のセルロース繊維は細胞長軸と直角に並んでいるので、吸水した時、細胞は横方向には伸長出来ず、縦方向に偏った伸長をするのですが、ヒヤシンスなどのような吸水すると縮む根の皮層細胞では細胞壁のセルロース繊維が長軸と平行に近い方向でヘリカルに並んでいるので、吸水すると横方向に伸長し、横方向に伸長した分、縦方向の長さが減少するのです。セルロース繊維の方向は細胞質表層微小管の並び方によって制御されていますが、微小管も長軸と平行に近い向きで並んでいます。
ついでですが、収縮根は新しく形成された球茎や鱗茎が地表近くにある時には形成されますが、地中深くにある時には形成されません。球茎や鱗茎は自分の位置を夜と昼の温度の違いで判断しているらしく、夜の温度を昼の温度より低くしておくと収縮根を形成しますが、同じにしておくと形成しません。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2015-11-15
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