一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ガラス色での光合成増加について

質問者:   一般   イアン
登録番号3391   登録日:2015-11-12
温室を設計するにあたり、植物の生長促進を考えてガラスの色を赤と青を中心にした色ガラスを太陽光のよくあたる天井に設置しようかと考えているのですが、効果はあるのでしょうか?
人工的に色を変えるだけで、太陽光の波長などが、植物に影響することはありますか?
イアン 様

ご質問をありがとうございます。
温室の天井に色ガラスを使うことによって植物の生長促進を期待されるわけですね。天井を含めてガラス部分の全面を同じ色にされるのでしょうか。

植物が受ける光の質(色-波長)と光の量(強さ)が問題で、着色ガラスがどのような光学特性(光透過のスペクトル特性)のものであるかによって結果は大きく違って来ると思います。赤色のガラスは青い光を通さない傾向が強く、青色のガラスは赤い光を通さない傾向が強いことになると思いますが、さらに、赤色と青色の両方の光を透すガラス(緑色のガラス)なども考えておられるのでしょうか。

例えば赤色ガラスの場合、青色の光がどの程度まで減光されるか(減光される波長領域の問題も含めて)が問題であり、肉眼で見てガラスに赤色が付いていても太陽から来る青色光を大幅に遮断するものでなければ、次に述べる光質の影響は現れず、生育への影響は少ないことが期待されます。むしろ、何色であれ、色が付くことで全体としての光量が減少することで光合成の速度が低下し、生長が抑えられる可能性があります。一般論としては、色ガラスを使わない方が生育には良いのではないでしょうか。ただ、光の質のバランス(波長特性)が大幅に変わるようでしたら、次に述べるような効果が現われ、植物の種類によっては形態その他の特性に変化が生じる可能性は否定できません。

光の質と植物の生育との関係について言えば、生育のためのエネルギー源として光合成に利用される光(紫外、青色から赤色にかけての可視光が中心)に加え、青色や赤色領域の光はシグナルとして植物の生育に重大な影響を与えることが知られています。発芽から形態形成、結実に至るまでの植物の一生は、この種の光によって大きく左右されます。植物の生育に及ぼす光質の問題は人工光を用いる植物工場など実用面からも注目されることが多く、インターネット上に情報が多いと思います。本質問コーナーでも関連するQ/Aがありますので参考になさって下さい(例えば、登録番号1244, 1733, 1855)。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2015-11-13
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