一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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光ー光合成曲線

質問者:   教員   ホリサン
登録番号3394   登録日:2015-11-15
高校の教科書や資料集には「光ー光合成曲線」をはじめ、限定要因となるCO2濃度、温度変化による光合成速度のグラフが掲載されています。また、温度の違いによる「光ー光合成曲線」もあるのですが、CO2濃度の違いによる「光ー光合成曲線」はほとんど見当たりません。大気中の0.037%程度では明らかに限定要因になっていますが、温度が最適条件の場合、CO2濃度が0.1%や0.2%の時の光ー光合成曲線はどのような形状になるのでしょうか。WEBサイトなどがあればご紹介いただけると幸いです。よろしくお願いします。
ホリサン 様

ご質問を有り難うございます。
この質問には、大気中の二酸化炭素濃度増加の問題など、光合成に及ぼす環境因子の影響について第一線で研究しておられる東北大学の牧野先生が回答して下さいました。ご参考になさって下さい。

【牧野先生からの回答】
ご指摘の通り、CO2濃度を変えて光―光合成曲線を調べたデータは私も見たことがありませんでした。
そこで、もう20年以上も前ですが、自分でイネとインゲンを材料に調べた結果を米国植物生物学会の科学雑誌Plant Physiologyに公表しました(添付:Makino et al.Plant Physiol. (1994) 105: 173-179のFig.1)です。

Plant Physiologyのウエブサイトhttp://www.plantphysiol.org/のOuick Search欄にAuthorに MakinoとYearに1994を入れて頂ければ、論文が表示され、ダウンロードも
可能です。

イネの場合は光―光合成曲線の応答は光合成速度の絶対速度は高いCO2濃度の方が高くなりますが、光強度に対する相対的な応答そのものには差がありません。一方、イ
ンゲンでは低いCO2濃度では光飽和点は明確に下がり、高いCO2濃度では絶対速度のみならず、光飽和点も上がります。この植物種間差がなぜ現れるかはわかっていませ
ん。なお、論文ではCO2濃度は濃度でなく分圧で表示されています(例えば、0.035%=350 ppm = 35 Pa)。正しくは溶存CO2分圧に光合成が依存するからです。また、CO2
分圧の葉の内部分圧で表しています。測定CO2濃度に換算すると、Ci=13から14 Paが0.02%CO2濃度測定、Ci = 21から24 Paが0.035%CO2濃度(当時の大気CO2濃度)測定、Ci= 50から70 Paが0.08%濃度(CO2飽和濃度)測定に相当します。

 牧野 周(東北大学大学院農学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2015-11-17
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