一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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紅葉に関して

質問者:   会社員   糖化に興味あり
登録番号3395   登録日:2015-11-18
最近、本サイトを知るに至り、大変興味深く拝見しています。
私は生物について全くの素人なので、頓珍漢な質問や文章がありましたら申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
現在、人体における酸化還元や糖化について興味を持ち、色々な書籍やインターネットサイトで勉強をしております。
季節柄、辺りを見回すと、鮮やかな紅葉に目を奪われ、ふと、美しい紅葉も葉の老化のプロセスの一つではなかろうかと考えました。
人体における老化は酸化や糖化によって、(大変大雑把に言うと)錆びつきや焦げ付きにより、細胞が脆くなるなど、老朽化していくことと受け止めております。
同時に酵素や抗酸化物質などで生体防御していることも併せて考えておりますと、緑葉→紅葉→落葉も同じような流れではないかと思ったのです。
そこでお聞きしたいのですが、紅葉の段階で、糖の濃度がました葉の中では糖化や酸化が起き、アントシアニンなどが抗酸化物質として生体防御を行っているという考え方は合っていますでしょうか?
よろしくお願いいたします。
[糖化に興味あり] の方へ

先の質問(登録番号3394)への回答で参考にと挙げました関連質問/回答をお読み下さったとのことですので、紅葉についてはかなりご理解いただけていることと思います。
生物学的な問題として、落葉するのにある種の植物はなぜ鮮やかな色を作り出すのだろうか?生物は自分の生命活動にとって余り無駄な事をしないのが普通ですので、紅葉もなにか生物学的/生理学的意義(役割)があるはずだと考えて良いでしょう。ここでいくつかの説を紹介いたします。ご質問への参考になるかと思います。

1. ご指摘のようにアントシアニンは抗酸化作用がありますので、葉の細胞内での例えば強い光による光酸化を抑えて、クロロフィルや他の分子の分解を抑え、葉の加齢(老化)を防ぐことはあるかもしれません。しかし、紅葉は落葉へのステップですので、この段階でアントシアニンがそのような生理的役割を果たしているとは考えにくい。ある研究では、「紅葉時葉の老化が進行する時葉の細胞が光酸化によって傷害を受けてしまい、クロロフィルや光合成に関係する酵素タンパク質の分解で遊離するNなどのミネラルの再吸収が有効に行われなくなることを防ぐ為に、アントシアニンが光学的な皮膜を形成して傷害を抑える。」と推論しています。
紅葉した葉と紅葉しない葉とで落葉後にNの残存量を比べると、紅葉した葉の方がずっと少ないそうです。
2. 次は実験的証拠はありませんが、進化学者のWilliam Hamilton が初めに唱えた説です。秋の紅葉は昆虫が枝や幹に卵を産みつけにやってこないための方策であるというものです。ただし、紅葉した葉が昆虫の食欲をそそらないとか、有毒物質が含まれるとか、忌避物質が含まれるとかの場合に限られますが。
3. これも単なる仮説ですが、アメリカのラトガー大学のTed Stiles と言う人が提唱しているものです。種子の散布は植物にとって繁殖の上で大切な事です。カラフルな果実や香りのよい果実は動物や鳥が啄んで他所へ運んでくれますが、目立たない果実には彼等蛾訪れるチャンスは少ないと思われます。そこで、カラフルな葉がこれらを惹き付けるのに役立っているというものです。

他にもいくつかありますが、いずれも仮説に過ぎません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2015-11-25
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