質問者:
自営業
noi
登録番号3405
登録日:2015-12-15
こんにちは。みんなのひろば
やさいの栄養価の変化
登録番号3399でのご回答ありがとうございました。化学を学んできて、現在料理を仕事にしておりますnoiです。
栄養学の内容も含む質問であり、恐縮です。
植物学、栄養学、食品化学がLINKする文献をうまく検索できてない状態であり、前回とても丁寧に返信頂きましたためこちらで質問したいと思いました。
やさいは、生(なま)と加熱後では、構造や分子の状態が異なります。
加熱をすれば、揮発性分子は揮発(香る)、酵素は分解、たんぱく質は変性、など、様々な変化があります。
味、香り、食感が変わりますが、栄養価的な変化はどうなるのでしょうか。
例えば、ですが、加熱をして、揮発性成分も含め、変性したとしても生の状態のときに存在していた分子等々も全て食べられるとしたら、生とはどんな違いがあるのか、
変性後の分子、分解された分子、それらがもとのかたちとは異なるとしても野菜の中に存在していたら、食べたときの栄養等の影響は異なるのか、考えております。
もし、可能でしたらご回答頂けますと幸いです。
よろしくお願いします。
noiさん:
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
栄養学、調理学にかかわるご質問で本コーナーが責任をもってお答えすることができませんのでお断りすべきかもしれませんが、生化学の立場から食べ物を食べたとき何が起こっているかを考えてみました。栄養、調理という語には様々な要素、意味合いが含まれていますが、ここでは栄養とはエネルギーと体組織構築の素材を供給する食物成分及びそれらの体内代謝を円滑に進める役割を持つ食物成分を摂取することとします。調理も同じで、視覚、味覚、嗅覚に訴える操作が重要な要素ですが栄養価という視点でのみとらえる食品加工といたします。
栄養素にはたんぱく質、炭水化物、脂質のほかにビタミン、ミネラルが挙げられています。三大栄養素はエネルギー及び体を構築する材料を供給しますが、ビタミン、ミネラルは三大栄養素を代謝する生化学反応に不可欠な補助成分とみなされます。また近年では食物繊維の質、多寡など、一般に機能性食品と呼ばれる食品群が重要視されていますがこれらも栄養源(エネルギー源、素材源)としてではなく体内代謝をはじめ消化、吸収作用を円滑にする食品とみられます。高分子であるタンパク質、消化性の炭水化物を摂取すると消化管系から分泌される消化酵素によって構成低分子成分(タンパク質であればアミノ酸、炭水化物は構成糖―ブドウ糖をはじめとする多種あります)まで、脂質は構成脂肪酸とグリセロールへと分解されます。分解産物であるアミノ酸、単糖類、脂肪酸、グリセロールは主に腸管で吸収され、それぞれが代謝されてエネルギー源としてまた身体を作る材料として使われます。食品にもともと含まれていた低分子成分は多くは、そのまま吸収されるか、多少の変化を受けて吸収されるはずです。
ここで調理から味覚、視覚、嗅覚に訴える要素を除くと調理の本質は加熱(煮る、蒸す、焼く)です。なぜ加熱するかを一言でいえば「食べやすくする」ことではないでしょうか。加熱の過程で揮発性の香気成分の一部は失われるでしょう。食肉類のたんぱく質は熱変性を受け「柔らかく」なる(食感が変わる)と同時に低分子成分(脂質を含め)は可食部分全体に行き渡るでしょう。植物食品の澱粉はα化し消化されやすく(分解されやすく)なりますし、繊維などの細胞壁多糖のうち熱水可溶性のものは可溶化し、不溶の繊維類も十分水を含んで「柔らかく」なります。煮た場合、低分子成分の一部は煮汁に溶け出すでしょうが、多くは食品全体に行き渡ることは同じです。たんぱく質は熱変性をして立体構造は変わりますが構成アミノ酸組成に変化はなく消化されれば未変性たんぱく質と同じアミノ酸を生じます。消化性炭水化物や脂質も加熱したものもほとんどは「生」と同じく消化酵素で同じ構成成分に分解されます。そのため加熱食品も栄養価としては変わりないと思われます。加熱によって他の物質に固く結合していた栄養成分が遊離してより吸収され易くなり栄養価が高まることもあり得ることです。食肉類は「焼く」と脂肪酸、アミノ酸、糖類が複雑な反応を起こして「ステーキの香り」「焼肉の香り」成分を生成し、これらは揮発性でアルコール類、アルデヒド類、ケトン類など多種類の混合物とされています。何かは少しばかり失われているでしょうが「美味しさ」が加わります。野菜の煮汁や食肉のドリップは捨てないで利用することは勧められていますね。一部のビタミン類、アミノ酸は熱に弱いとされているものがありますが、複雑な組成の食品調理の段階でどの程度、機能を失うかについてはよく知りませんので専門家にお尋ねください。
つまり、調理をしてもしなくても消化管内での消化産物はほぼ同じ組成ですので栄養価には大きな違いはないはずです。調理は人が「美味しく」「食べやすく」感ずるように食品を加工することで、栄養的に一部は失われるものもあるでしょうが過剰な加熱を避ければ大局的に見て大きな違いはない、と思うのですが。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
栄養学、調理学にかかわるご質問で本コーナーが責任をもってお答えすることができませんのでお断りすべきかもしれませんが、生化学の立場から食べ物を食べたとき何が起こっているかを考えてみました。栄養、調理という語には様々な要素、意味合いが含まれていますが、ここでは栄養とはエネルギーと体組織構築の素材を供給する食物成分及びそれらの体内代謝を円滑に進める役割を持つ食物成分を摂取することとします。調理も同じで、視覚、味覚、嗅覚に訴える操作が重要な要素ですが栄養価という視点でのみとらえる食品加工といたします。
栄養素にはたんぱく質、炭水化物、脂質のほかにビタミン、ミネラルが挙げられています。三大栄養素はエネルギー及び体を構築する材料を供給しますが、ビタミン、ミネラルは三大栄養素を代謝する生化学反応に不可欠な補助成分とみなされます。また近年では食物繊維の質、多寡など、一般に機能性食品と呼ばれる食品群が重要視されていますがこれらも栄養源(エネルギー源、素材源)としてではなく体内代謝をはじめ消化、吸収作用を円滑にする食品とみられます。高分子であるタンパク質、消化性の炭水化物を摂取すると消化管系から分泌される消化酵素によって構成低分子成分(タンパク質であればアミノ酸、炭水化物は構成糖―ブドウ糖をはじめとする多種あります)まで、脂質は構成脂肪酸とグリセロールへと分解されます。分解産物であるアミノ酸、単糖類、脂肪酸、グリセロールは主に腸管で吸収され、それぞれが代謝されてエネルギー源としてまた身体を作る材料として使われます。食品にもともと含まれていた低分子成分は多くは、そのまま吸収されるか、多少の変化を受けて吸収されるはずです。
ここで調理から味覚、視覚、嗅覚に訴える要素を除くと調理の本質は加熱(煮る、蒸す、焼く)です。なぜ加熱するかを一言でいえば「食べやすくする」ことではないでしょうか。加熱の過程で揮発性の香気成分の一部は失われるでしょう。食肉類のたんぱく質は熱変性を受け「柔らかく」なる(食感が変わる)と同時に低分子成分(脂質を含め)は可食部分全体に行き渡るでしょう。植物食品の澱粉はα化し消化されやすく(分解されやすく)なりますし、繊維などの細胞壁多糖のうち熱水可溶性のものは可溶化し、不溶の繊維類も十分水を含んで「柔らかく」なります。煮た場合、低分子成分の一部は煮汁に溶け出すでしょうが、多くは食品全体に行き渡ることは同じです。たんぱく質は熱変性をして立体構造は変わりますが構成アミノ酸組成に変化はなく消化されれば未変性たんぱく質と同じアミノ酸を生じます。消化性炭水化物や脂質も加熱したものもほとんどは「生」と同じく消化酵素で同じ構成成分に分解されます。そのため加熱食品も栄養価としては変わりないと思われます。加熱によって他の物質に固く結合していた栄養成分が遊離してより吸収され易くなり栄養価が高まることもあり得ることです。食肉類は「焼く」と脂肪酸、アミノ酸、糖類が複雑な反応を起こして「ステーキの香り」「焼肉の香り」成分を生成し、これらは揮発性でアルコール類、アルデヒド類、ケトン類など多種類の混合物とされています。何かは少しばかり失われているでしょうが「美味しさ」が加わります。野菜の煮汁や食肉のドリップは捨てないで利用することは勧められていますね。一部のビタミン類、アミノ酸は熱に弱いとされているものがありますが、複雑な組成の食品調理の段階でどの程度、機能を失うかについてはよく知りませんので専門家にお尋ねください。
つまり、調理をしてもしなくても消化管内での消化産物はほぼ同じ組成ですので栄養価には大きな違いはないはずです。調理は人が「美味しく」「食べやすく」感ずるように食品を加工することで、栄養的に一部は失われるものもあるでしょうが過剰な加熱を避ければ大局的に見て大きな違いはない、と思うのですが。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2015-12-17
今関 英雅
回答日:2015-12-17