質問者:
大学生
dok
登録番号3419
登録日:2016-01-20
植物の中にはクエン酸とリンゴ酸が多く含まれているそうですが、それらの主な役割は何なのでしょうか?調べたら代謝物質の一つなどとしか出てきません。詳しい働きは今はわかっていないのでしょうか?高等植物に対してです。
みんなのひろば
植物中の有機酸について
dok さん:
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
確かに動物に比べれば植物の果実はクエン酸、リンゴ酸などの有機酸を多量に蓄積しています。ご質問の主旨が、なぜ植物(果実)に多量の有機酸が蓄積されるのか、その役割は何か、ということでしたらお答えするのが難しいところです。植物種の生存、繁栄は種子をどれだけ効率よく散布するかにかかっており、進化の過程でいろいろな戦略がとられ現在に至っていると考えられます。有機酸をためるような果実は動物に食べられることで種子を散布する戦略をとったために動物が食べやすい「味」を持った進化をしてきたものでしょう。人は育種という技術を駆使して食べやすい果実、美味しい果実を実らせる品種を作り出してきました。これは、やはり本来持っている、持つことによって進化してきた形質を人が増強した過程でもあります。
しかし、植物に限らず酸素呼吸をするすべての生物(細胞)においてはクエン酸、コハク酸、リンゴ酸といった有機酸は必ず含まれていて大変重要な働きをしています。動物は糖類、脂肪類を食餌として摂取しますし、光合成植物は太陽エネルギーを取り込んで二酸化炭素から糖を合成します。糖や脂肪は炭素、水素といった元素とともにエネルギーを持っています。生物は、これらのエネルギーを生存、成長のために利用できるように取り出す生化学反応系をもっていますが、同時に材料であった炭素、水素を持つ中間産物を自身の体を作る材料として利用しています。つまり糖、脂肪の酸化によるいろいろな物質変化の流れとそれに付随するエネルギーの流れがあることになり、最終的に炭素は二酸化炭素に、水素は水になり、エネルギーはATPと呼ばれる生体エネルギーの通貨のような物質に移されます。
クエン酸、リンゴ酸などはこ一連のの生化学過程の一部を担う代謝経路の重要な構成物質となっています。クエン酸回路、TCA回路などと呼ばれる回路的生化学反応があり、糖、脂肪などが酸化されてできる中間産物(アセチルCoA=酢酸)をさらに順次酸化して構成元素は二酸化炭素へ、エネルギーは還元力(水素化された物質)として保存する回路的反応です。回路が回ることで酢酸が酸化されることになります。その過程の中間代謝物としてクエン酸、コハク酸、フマール酸、リンゴ酸などがあります。この回路の詳細はWebで簡単に調べることができますので「クエン酸回路」をキーワードとして検索して調べてください。還元力はさらに別の反応系列によってエネルギーはATPに移され、水素は酸素に渡され水となります。
植物の果実に多量に蓄積されるクエン酸、リンゴ酸などは、TCA回路の中間体となっているクエン酸やリンゴ酸などを引き抜いて蓄積するのですが、これらは回路反応の構成物質ですから途中で回路から横取りして別のところにため込むと、回路は構成物質が無くなるので止まってしまいます。それは死を意味します。そこで、糖の酸化分解過程(解糖系)にあるピルビン酸(アセチルCoAになる前の中間体)に直接二酸化炭素を結合させてTCA回路の一員を作り回路に供給する経路をもち、回路は常に順調に回る仕組みができています。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
確かに動物に比べれば植物の果実はクエン酸、リンゴ酸などの有機酸を多量に蓄積しています。ご質問の主旨が、なぜ植物(果実)に多量の有機酸が蓄積されるのか、その役割は何か、ということでしたらお答えするのが難しいところです。植物種の生存、繁栄は種子をどれだけ効率よく散布するかにかかっており、進化の過程でいろいろな戦略がとられ現在に至っていると考えられます。有機酸をためるような果実は動物に食べられることで種子を散布する戦略をとったために動物が食べやすい「味」を持った進化をしてきたものでしょう。人は育種という技術を駆使して食べやすい果実、美味しい果実を実らせる品種を作り出してきました。これは、やはり本来持っている、持つことによって進化してきた形質を人が増強した過程でもあります。
しかし、植物に限らず酸素呼吸をするすべての生物(細胞)においてはクエン酸、コハク酸、リンゴ酸といった有機酸は必ず含まれていて大変重要な働きをしています。動物は糖類、脂肪類を食餌として摂取しますし、光合成植物は太陽エネルギーを取り込んで二酸化炭素から糖を合成します。糖や脂肪は炭素、水素といった元素とともにエネルギーを持っています。生物は、これらのエネルギーを生存、成長のために利用できるように取り出す生化学反応系をもっていますが、同時に材料であった炭素、水素を持つ中間産物を自身の体を作る材料として利用しています。つまり糖、脂肪の酸化によるいろいろな物質変化の流れとそれに付随するエネルギーの流れがあることになり、最終的に炭素は二酸化炭素に、水素は水になり、エネルギーはATPと呼ばれる生体エネルギーの通貨のような物質に移されます。
クエン酸、リンゴ酸などはこ一連のの生化学過程の一部を担う代謝経路の重要な構成物質となっています。クエン酸回路、TCA回路などと呼ばれる回路的生化学反応があり、糖、脂肪などが酸化されてできる中間産物(アセチルCoA=酢酸)をさらに順次酸化して構成元素は二酸化炭素へ、エネルギーは還元力(水素化された物質)として保存する回路的反応です。回路が回ることで酢酸が酸化されることになります。その過程の中間代謝物としてクエン酸、コハク酸、フマール酸、リンゴ酸などがあります。この回路の詳細はWebで簡単に調べることができますので「クエン酸回路」をキーワードとして検索して調べてください。還元力はさらに別の反応系列によってエネルギーはATPに移され、水素は酸素に渡され水となります。
植物の果実に多量に蓄積されるクエン酸、リンゴ酸などは、TCA回路の中間体となっているクエン酸やリンゴ酸などを引き抜いて蓄積するのですが、これらは回路反応の構成物質ですから途中で回路から横取りして別のところにため込むと、回路は構成物質が無くなるので止まってしまいます。それは死を意味します。そこで、糖の酸化分解過程(解糖系)にあるピルビン酸(アセチルCoAになる前の中間体)に直接二酸化炭素を結合させてTCA回路の一員を作り回路に供給する経路をもち、回路は常に順調に回る仕組みができています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2016-01-21
今関 英雅
回答日:2016-01-21