一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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アンモニアとカルシウムの拮抗作用の原因

質問者:   自営業   アグネス
登録番号3428   登録日:2016-02-04
キュウリ栽培中に何度かカルシウム欠乏症を発生させた経験があります。土壌中にはカルシウムが多量に存在するのにどうしてキュウリにカルシウム欠乏が発生するのか、疑問に感じていましたが、肥料に詳しい方から、これは窒素(アンモニア態窒素)過剰施用によるカルシウムの吸収阻害(拮抗作用)の結果だと聞き、これには思い当たる事がありましてので、納得しているのですが、どういう理屈(原因)で拮抗作用が起こるのか?という新たな疑問がわいて来ました。これについて、ご教授いただけないでしょうか?
アグネス さん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は植物栄養学がご専門の東京大学 藤原 徹先生から回答を頂きました。植物における無機イオンの吸収量調節などについては経験的にはいくつかの現象が観察されていますがそれらの仕組みについてはまだ分からないことが多いようです。

【藤原先生からのご回答】
カルシウムとアンモニアの拮抗作用は知られている様で、拮抗作用が一つの説明だと思いますが、実際に何が起こっているのかについては簡単にはわからないと思います。それぞれの土壌のpHやそれぞれのイオンの濃度や植物側の要求量等によってもどの程度の拮抗があるのかは変わってくると思います。
カルシウム欠乏症については、土壌のカルシウム濃度だけでなく、カルシウムがどれだけ成長している組織に供給されるかが重要で、カルシウムは再転流しにくい元素なので、蒸散流での供給が重要になります。蒸散流はしかし成長しつつある若い葉や果実などにはあまり行かないので、カルシウム欠乏はそのような組織に出やすいということになります。蒸散を抑制するような状況、例えば土壌に塩類が蓄積するような状況になると、カルシウム欠乏が出やすくなります。温室での栽培では土壌に肥料成分が蓄積しがちで、カルシウム欠乏症は注意する必要があると思います。

 藤原 徹(東京大学大学院農学生命科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2016-02-08
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