一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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水田の役割

質問者:   一般   ネモト
登録番号3437   登録日:2016-02-25
初めて質問させていただきます。

米を栽培する際田に水を張りますが、どうしてなのでしょうか?

畑作のように必要なときに水をやるという方法では育たないのでしょうか、、、

よろしくお願いします。
ネモトさん:

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
イネはもともと湿生植物(半水生植物)で湿地条件を好む植物です。人の重要な食料として栽培の歴史は大変長いものですが、その過程で水田に栽培される水稲と水利条件の悪い畑地でも栽培できる陸稲に区別がされるようになりました。水稲、陸稲は同じ種ですが収量、食味などは水稲がよく、栽培管理も水田栽培の方が有利なので水利条件がよければ水稲栽培が好まれてきたものです。
実際そのように育種されてきたので現在の水稲品種をそのまま畑地で栽培しても収量も食味も悪いものとなります。さて、本論の「水田に役割」ですが、まず現在の水稲品種の生育が良好であること(水田栽培を前提として育種されてきたので当然ですが)があります。加えて水田栽培では雑草管理が畑地より容易、連作障害が起きない(土壌を水洗浄するため)、温度管理が可能(湛水の温度変化は気温変化より小さい)などの利点があります。また、視点はまったく違いますが水田は巨大な保水能力がありますので、水田の喪失は水、ひいては栄養循環にも影響をもたらすことが指摘されています。
「必要なときに水をやるという方法では育たないのでしょうか」との疑問ももっともなことです。陸稲を栽培した地域、時代もあったことで分かるようにイネは「水田でなければ栽培できない」ものではありません。しかし前述したように水稲の方が好まれるのが現状です。日本、中国南部、東南アジアなどでは雨水に恵まれていますので農業用水路を整備すれば比較的水の問題は起きないで水田栽培が可能ですが、アフリカ、アメリカ、オーストラリアなどの多くの地域では農業用水の確保が大きな問題となっています。そこでイネについても最小限の給水で栽培できる方法、品種などの開発研究がおこなわれています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2016-02-29
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