一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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毛状根の定義について

質問者:   大学院生   コヤノ
登録番号3443   登録日:2016-03-08
 現在、研究で遺伝子組換え植物の作出を行っており、その過程で毛状根を培養しています。一般的に毛状根は、植物ホルモンを含まない培地でも成長し、無限に増殖するという特徴があります。しかし、私の研究では、植物ホルモンを含まない培地では、ほとんど成長しないため、培地に植物ホルモンを添加し、培養を行っています。その結果、毛状根が一度カルス化した後、盛んに発根して伸長するようになりました。

 そこで気になったのが、毛状根の定義についてです。私の場合、毛状根を一度カルス化させており、その後に生じた不定根を培養していることになります。この不定根は毛状根といえるのでしょうか。また、毛状根からカルスを誘導して再生させた植物体の根を採取し、培養を行って増殖させた根についても、同様に毛状根といえるのでしょうか。

 回答よろしくお願いします。
コヤノ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。回答はこの分野の研究にも関係されておられる、広島大学大学院先端物質科学研究科の田中伸和教授にお願いしました。
以下の通りです。研究の進展がありますように。

【田中先生からのご回答】
毛根病菌Agrobacterium (Rhizobium) rhizogenesが植物に感染すると感染部位に不定根が発生しますが、髪の毛のように生えている様子から毛状根と呼ばれています。毛状根はA. rhizogenesが植物に感染する際、保有している発根(Root-inducing: Ri)プラスミドのT-DNAが植物細胞に送り込まれ、染色体に組み込まれることで不定根が形成されるように形質転換された植物の腫瘍(癌)の一種です。感染部位から出現した毛状根を切り取ってそのまま培養すれば当然ながら毛状根ですが、カルスを経て再生した不定根でも、組み込まれたRiプラスミドT-DNAが機能して不定根形成しているのであれば毛状根と呼んで差し支えないと思われます。また、毛状根からの再生植物の根は不定根ではないので毛状根と呼ぶのは差し障りがあると思われますが、その根を採取し不定根として培養している状態であり、保有されるRiプラスミドT-DNAが不定根形成能を維持していれば毛状根と呼んでも差し支えないと思われます。すなわち、「不定根形成能を有するRiプラスミドT-DNAを保有する形質転換細胞由来の不定根」が毛状根であるという定義でよいでしょう。

 田中 伸和(広島大学大学院先端物質科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見  允行
回答日:2016-03-10
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