一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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イネは体内成分を葉面からたくさん分泌するのか

質問者:   その他   ノーカ
登録番号3451   登録日:2016-03-26
水稲のいもち病を防ぐ殺菌剤には、根から吸わせて、葉面のいもち病菌に作用する薬剤があります。この仕組みが分かりません。何かしらイネの葉から表面に染み出て、その中に薬剤が溶けているとしか思えませんが、葉面から全面を覆うほどたくさんの物が出ているのでしょうか。
ノーカ さん:

みんなの広場のご利用ありがとうございます。
植物は炭素(二酸化炭素)以外の必要な栄養素を根で吸収しています。緑色部分では光合成によって糖類を合成していますが、その反応過程では水をはじめ根で吸収した栄養素を使っています。糖類は全身で代謝され成長に必要な材料(アミノ酸、脂質、多糖類、たんぱく質、核酸など)に変換され、一部は呼吸作用で成長に必要なエネルギー源となります。これらの過程全体にも根から吸収された栄養素が使われています。根で吸収された物質は全身に導管を通して送られています。根は必要な栄養素ばかりでなく、土壌中にあるいろいろな無機物、有機物をも吸収します。土壌に施用された薬剤も根で吸収されて全身に運ばれます。病原菌は植物全体を覆っている表皮から体内に侵入しますので薬剤の効力はそこで発揮されます。薬剤を葉に散布するか土壌に与えるかは薬剤の性質によることで開発段階で十分に試験され効率よく吸収される方法が提案されているはずです。根から吸収された有機化合物の多くは体内で代謝変換され無毒化されるか酸化分解されるのが普通です。このように根で吸収された物質は成長に使われるか不要になったものは細胞内に貯められていて枯れたときに土壌に戻されますので、吸収されたものがそのまま葉の表面を覆うほど蓄積されたり分泌されたりすることはありません。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2016-03-27
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