一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

「レモン」と名のつく植物について

質問者:   会社員   ばろきち@なら
登録番号3454   登録日:2016-03-30
レモンやレモンマートルなど、触れるとレモンの良い香りがして好んで育てております。しかしレモン、レモンマートル、レモンユーカリ、レモングラスなど、「レモン~~」と名のつく植物は、同種の中でも耐寒性が弱いものが多い気がします。 成分であるシトロネラールなどが寒さにより植物に影響をあたえるのでしょうか? 
ばろきち@なら様

質問コーナーへようこそ.歓迎いたします。レモンの香りは爽やかでいいですね。いくつか名前を挙げておられるように,レモンと名のつく植物は結構あります。これらは何れも果実のレモンのような香りがすることからそのように名付けられたものです。但しすべてがレモンと同じ香気成分を持っているとは限りません。レモンの香気は果皮に含まれるいわゆる芳香油(essential oil)によるもので、その中でレモンの特徴的な香りの元となっているのはシトラル(citral)と云う物質です。シトラルは立体異性体であるゲラニアル(geranial)とネラル(neral)の混合物です。これに、リモネン(limonene)、β-ピネン(β-pinene)、γ―テルピネン,(γ-terpinene)、p-シメン)、p-cymeneなどが加わってレモンの種類により多少の変化をもたらしています。他のレモンの香りがする植物の芳香油成分にもシトラルは含まれています。ところで、植物の香気は植物にとってどんな意味があるかというと、主として昆虫との関わりという観点から、生態的な意義があります。この問題については質問コーナーで「香り」という事項を検索していただくと、関連する質問と回答が沢山記載されていますので調べて下さい。登録番号3268は特に参考になるでしょう。オレンジ類の芳香油主成分であるリモネンの含量を遺伝子操作で変えて行った研究では(A.Rodriguez et al., Plant Physiology 156:793, 2011)、果実の香気は昆虫の摂食活動と、病原菌感染を仲介してると報告されています。しかし、これらの香気成分の存在やその含量が植物の耐寒性と関連があるとは考えられません。確かにレモンと名のつく植物は寒さに弱いです。特にレモンは柑橘類の中でも寒さには弱いとされています(登録番号0537)。これらの植物はそもそもが暖かい地方で生育するものなので、他の同様の植物と同じく寒冷地では育ち難いのです。
植物の耐寒性のメカニズムは沢山の研究があります。質問コーナーでも解説されていますので、そちらを読んで下さい(登録番号1164参照)。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見  允行
回答日:2016-04-02
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内