一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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オジギソウの葉柄の動きと光の関係を調べるための実験方法について

質問者:   高校生   赤石
登録番号3455   登録日:2016-04-01
 私はオジギソウの葉柄の動き(水で葉柄が大きく揺れるように刺激を与えた時の運動)と当てられている光の関係について実験しています。これまでの実験では光環境や植物内の状況や条件をそろえきれていなかったと考えて、新たに次のように実験したいと思っています。
 実験の仕方としては、1週間同じ教室に置いたオジギソウを次の日にそれぞれ(色もしくは光の強さが)異なる光の条件の場所に置きます。その後、2日間、光を当てながら(体内時計をできる限り考慮するため日没の時間に光をなくし、日の出にできる限り近い時間に光を点けます)決まった時刻に刺激(水で葉柄を大きく揺らす)を与えます。葉柄の動きの速さの変化の割合(1日目の動きの速さと2日目の動きの速さを比較します)と光の色から、葉柄の動きと当てられる光の色の関係をしりたいと思っています。
 すみません、後半の方になってしまいました。私の質問の内容は、今書いた実験でさらにオジギソウを新しい環境の場所(1週間オジギソウを同じ教室に置いた後、それぞれオジギソウを置く異なる光の条件の場所を「新しい環境の場所」とします)に慣らすためさらにオジギソウを「新しい環境の場所」に3日間ほど置いた時に、内部のエネルギーが光合成の可不可で大きく変化し、結果が出ても何が原因か、候補が多すぎて考察できない事が考えられるのですが、どのような方法で実験をすればオジギソウの内部のエネルギーに大きな影響を与えず、オジギソウを「新しい環境の場所」に慣らすことができるのでしょうか。私にはどうしてもわからなかったので質問します。どうかご回答のほど、お願いします。
赤石 様

このコーナーをご利用下さりありがとうございます。
一般論としては、明快な結論を得るには、①解明しようとする目標が明確に焦点を結んでいて、②対照(コントロール)がきちんととれ、条件を一つだけ動かすような解析になっていることが重要であると言えるでしょう。

この実験は水の滴下による刺激に応答するオジギソウの反応(傾性)と生育の際あるいは刺激・応答の反応を調べる際に照射される光との関係を解析しようとするものと理解されます。ご質問への直接的な回答にならないかも知れませんが、この実験で問題になると思われる点を以下に列挙します。

① 自然光に近い環境下にある教室で生育していた植物体を「新しい環境の場所」に移すことには多くの条件変化が伴う可能性があるので、出来れば管理された人工条件で日周リズムが確立している系を用いて実験するのが望ましいと思います。

② 予備実験として、一日の内のどの時期が水の滴下刺激による傾性反応の感受性が高いかを確認しておきたいものです。

③ 次に、連続暗期下に置くことを含めて光の強さの影響を調べることになるかと思いますが、光が弱い条件下で生育を続けるとエネルギー不足になるので反応が二次的に影響を受けることが心配されます。生育の光条件の変化はいろいろな生理活性に影響を与える可能性があるので、「新しい環境の場所」に慣らす時には、そのことに十分に留意しながら実験・観察を進める必要があると思います。

④ 照射する光の色を変えようとされていますが、異なる色(質)の光の影響を比較するには、光の強さ(光量子密度)が同じであることが前提になります(光強度の範囲も重要です)。考察に際しては照射光のスペクトル特性に留意する必要があります。また、③で述べたことも問題になりますね。

⑤ この実験の目的とは視点がずれますが、オジギソウの日周(就眠)変動においては、夕刻に就眠(閉葉)が始まる頃とか早朝に覚醒(開葉)が始まる前に与える光は就眠のリズムに大きな影響を与えるようですね(日本植物生理学会高校生研究発表会(#8)、盛岡-2016)。この効果に限って光の強さや色の影響を調べるのは比較的容易なことのように思えます。また、強光照射の刺激に応答する傾性反応における光の強さや色の影響も調べやすいかも知れませんね。

⑥ 実験によっては、「動きの速さの変化の割合」が植物の個体や部位によって違って来ることが懸念されますが、この問題にはどのように対処されていますか。

以上、実験の方法を中心に、ご質問に直接関係ないことをも含めて、気になる点を書かせて頂きました。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2016-04-03
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