質問者:
教員
色水
登録番号3463
登録日:2016-04-22
こんばんは。以前桜の花のことでお世話になった者です。今回は、差していただけの切り花から色水ができるのか、教えていただきたくメールしました。みんなのひろば
茎からも色水はできますか?
今朝、コップに差していた花を、そろそろ終わりだなと思い処分しようとしたところ、驚いたことに、コップの水がきれいな赤紫になっていました。水は普通の水道水で、玄関に置いてあったので、何かが入ったり、陽が強く当たることもありません。栄養剤等も入れていません。コップに差していた花の中に、同じ赤紫のカーネーションが一輪ありましたが、その花びらが散って入ったわけでもありません。均一にきれいな赤紫のまるで色水のようでした。茎の断面が赤紫なわけでもありません。ただただ水だけが色水です。どうして色が付いたのでしょうか。教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
色水さん:
みんなの広場のご利用ありがとうございます。
状況が今一つはっきりしませんので、コップの水に何が起きたのかよく分かりません。そこで、ありそうな事柄を想像してみました。原因追究のために実験検証するときに立てる作業仮説みたいなもので、これまでの知見から予想できる可能性をあげるだけのものです。
差した植物側から何らかの色素(アントシアニン、ベタレインなど)が溶出することは考えられません。切り口からはごく少量の無色のフェノール性物質(たとえばある種のタンニンのような)や糖類、アミノ酸などが染み出すことはありうることです。
フェノール物質は空気中の酸素と反応して酸化され、酸化物がアミノ酸、糖類と反応すると赤色物質を形成することがあります。しかし、ご質問の状況では、その量はきわめてわずかで肉眼できれいな赤色が感知できるほどではないはずです。この可能性はとても低いものでしょう。次に色素を産生する微生物が繁殖した可能性です。学生時代に先輩の一人が霊菌(Serratia属)という細菌が産生する水溶性赤色色素を研究しておられたことを思い出しました。その美しい赤色は今でも鮮明に覚えています。
霊菌は空気中、土壌、水中に広くいるいわゆる常在菌と言われる細菌で病原性は弱いようですが病原菌とされています。ことによったらこの霊菌がコップの水の中で繁殖したのかもしれません。細菌がある程度増殖するだけの栄養物は植物側から染み出しているはずです。もう一つ、本コーナーの番号2589にありますが、竹、樹木の切り口に繁殖してオレンジ色の物質を出すフザリウムというカビの仲間があります。フザリウム属は土壌中にごく普通にいる菌類ですのでこれが切り花についていたことも考えられます。この色素が水溶性かどうかは分かりませんし、色調も違うかもしれません。
どれも実験検証しなければ本当かどうか分かりませんし、検証の過程でまた別の可能性も出てくるかもしれません。生物学の研究では、ちょっとした妙な現象を追究するところから新たな展開があることは稀なことではありません。
みんなの広場のご利用ありがとうございます。
状況が今一つはっきりしませんので、コップの水に何が起きたのかよく分かりません。そこで、ありそうな事柄を想像してみました。原因追究のために実験検証するときに立てる作業仮説みたいなもので、これまでの知見から予想できる可能性をあげるだけのものです。
差した植物側から何らかの色素(アントシアニン、ベタレインなど)が溶出することは考えられません。切り口からはごく少量の無色のフェノール性物質(たとえばある種のタンニンのような)や糖類、アミノ酸などが染み出すことはありうることです。
フェノール物質は空気中の酸素と反応して酸化され、酸化物がアミノ酸、糖類と反応すると赤色物質を形成することがあります。しかし、ご質問の状況では、その量はきわめてわずかで肉眼できれいな赤色が感知できるほどではないはずです。この可能性はとても低いものでしょう。次に色素を産生する微生物が繁殖した可能性です。学生時代に先輩の一人が霊菌(Serratia属)という細菌が産生する水溶性赤色色素を研究しておられたことを思い出しました。その美しい赤色は今でも鮮明に覚えています。
霊菌は空気中、土壌、水中に広くいるいわゆる常在菌と言われる細菌で病原性は弱いようですが病原菌とされています。ことによったらこの霊菌がコップの水の中で繁殖したのかもしれません。細菌がある程度増殖するだけの栄養物は植物側から染み出しているはずです。もう一つ、本コーナーの番号2589にありますが、竹、樹木の切り口に繁殖してオレンジ色の物質を出すフザリウムというカビの仲間があります。フザリウム属は土壌中にごく普通にいる菌類ですのでこれが切り花についていたことも考えられます。この色素が水溶性かどうかは分かりませんし、色調も違うかもしれません。
どれも実験検証しなければ本当かどうか分かりませんし、検証の過程でまた別の可能性も出てくるかもしれません。生物学の研究では、ちょっとした妙な現象を追究するところから新たな展開があることは稀なことではありません。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2016-05-10
今関 英雅
回答日:2016-05-10