一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ミカンとバナナのすじと葉脈の関係性について

質問者:   公務員   toriyama
登録番号3467   登録日:2016-04-27
 ミカンやバナナなどの果実には内部にすじがあります。これは維管束であることは理解できるのですが、ミカンのすじは網目状に、バナナのすじは平行にはしっているように見られます。
 これはミカンの葉脈が網状脈であり、バナナの葉脈が平行脈であることと関連があるのでしょうか。よろしくお願いします。
toriyamaさま

こんにちは。ご質問ありがとうございます。
植物の形態をご専門とされている日本女子大学の今市涼子先生に回答していただきました。

【今市先生のご回答】
被子植物の果実は雌しべの子房がふとったもので、子房壁は葉の変形したものと考えられています。したがいましてバナナの筋が平行に走り、ミカンの筋が網状に走っているのは、それぞれの葉がもつ平行脈と網状脈と関連があると考えてよいと思います。
ただし、果実が完成して熟するに従って、多くの場合、子房壁は外果皮、中果皮、内果皮の3層にわかれるようになり、それぞれに維管束が発達するので、果実の筋を、単純に1枚の葉の維管束と比較するのはむずかしいかもしれません。たとえば、ミカンの場合、外果皮の内側の白い綿状の部分が中果皮で、網目状の筋をもつ房は内果皮に相当します。綿状の中果皮にも網目状の維管束が発達していますが、房の筋と走り方が異なります。一方、バナナでは、筋は外果皮の内側に存在します。よくみていただくと、平行に縦に走るふとい筋の間に、これらをつなぐように多くの細い筋が横方向に走っています。この細い筋は、単子葉植物の葉の平行脈をつなぐ横隔脈に似ています。
以上のように、バナナとミカンの筋が果皮のどの部分に作られたものか違いはありそうですが、それぞれの種の葉にみられる葉脈の形質が果実にも現れている可能性が高いと考えられます。

 今市 涼子(日本女子大学理学部物質生物科学科)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2016-05-27