一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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カエデ類の水の吸い上げ時期のついて

質問者:   会社員   asano
登録番号3469   登録日:2016-04-28
こんにちは、造園業に従事している者ですが、
カエデ類が水の吸い上げを他の樹木より早く始める理由が解りません。
耐凍性を確保する為、樹体内の糖濃度を高めているのに
何故厳寒期に、わざわざ水分を導管無に入れているのでしょうか。
マンサクやウメ等活動時期が早いならまだ解るのですが
カエデ類は芽吹きもそれ程早くないように思われます。

よろしくお願い申し上げます。
asanoさま

ご質問、どうもありがとうございます。植物の水分生理をご専門とされている東京大学の舘野正樹先生にご回答いただきました。

【舘野先生からのご回答】
ウメなどの開花のためには、土の中から水を吸い上げる必要はありません。枝や幹の中の水だけで十分ということです。しかし、葉を展開して光合成を始めると大量の水が必要となるため、植物は早春からその準備を始めています。その仕組みついて紹介したいと思います。

冬の間、道管内の水は失われていたり、あるいは気泡が入っています。植物は展葉前に道管を水で満たす必要があります。カエデの場合、道管の周囲の細胞から糖を道管の中に放出します。すると、浸透圧の差によって、土壌中の水が道管の中に移行してきます。これによって道管が水で満たされ、展葉が可能になるというわけですね。ミズキなどはおそらく無機塩類を道管に放出して水を吸い上げています。

植物の中には、水を失った道管を放棄し、新しい道管を春に作ってから展葉するものもあるということです。いずれにせよ、展葉前に水で満たされた道管を準備することが大切なようです。

 舘野 正樹(東京大学大学院理学系研究科)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2016-05-07
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