質問者:
会社員
Susuke
登録番号3470
登録日:2016-04-29
初めまして。みんなのひろば
APGlll分類方法と日本固有種の関係について。
久々に植物図鑑を手に取り驚いたのは、カエデ科が消滅し、ムクロジ科に統合されていた事です。他の科でも同等の現象は起きていました。よりマクロ的な視点で植物体系が見直されている事を実感し、ワクワクしました。
そこで疑問に思ったのは、この新しい視点の導入で、日本固有種に対する見方にも変化が出てくるのでしょうか?
今まで固有種と思われていた植物が、帰化植物や栽培植に置き換えられる様な事がAPGlllの導入のもとで起こったのでしょうか?
よろしくお願いします。
Susukeさま
ご質問、ありがとうございます。植物の分類学をご専門とされている琉球大学の梶田忠先生にご回答いただきました。
【梶田先生からのご回答】
ご質問下さり、有難うございました。APG分類体系は、DNAの塩基配列を用いて推定された系統関係を反映するように作られた、被子植物の分類体系です。ようやく、一般書籍でも多く見られるようになりました。図鑑で用いられる科の配列が大きく変更されたり、これまでに慣れ親しんだ科の名前が消えてしまったりしていますが、最新の研究成果を基に作られた分類体系を見ると、仰る通り、わくわくしますね。2016年にはAPGIV(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/boj.12385)にアップデートされましたので、こちらもそのうち、ご覧になる機会があるかと思います。
さて、頂いたご質問には、以下のように答えさせて頂きます。最初の質問については、やや詳しい補足説明もつけておきました。
1. APG分類体系の導入で、日本固有種に対する見方は変化するか?: (回答)はい。「見方」の変化は、日本固有種に限らず全ての被子植物の全ての種で起こる場合があります。例えば、所属する科などの上位グループに、様々な変更が生じる場合があります。下記補足説明には、変更のいくつかの事例を挙げておきました。また、日本固有種の科についての変更をお知りになりたい場合は、「日本の固有植物」(加藤雅弘・海老原淳編 2011)」に個々の事例についての解説があります。あと、「見方の変化」という意味では、APG分類体系の導入によって、ある植物と他の被子植物との系統関係が、従来よりも分かりやすくなったということもできます。
2. APG分類体系の導入で、固有種が帰化植物や栽培植物に置き換えられる様なことがあるか?: (回答)ありません。分類体系が変更になったからといって、それぞれの種の分布や栽培の歴史などに影響はありません。
■補足説明: APG分類体系と従来の分類体系で生じ得る変更について、補足説明をしておきます。まず、従来の分類体系では、植物の種は階層構造(階級)をもった分類群の下で分類されていました。例えば、ユキモチソウは、従来の「新エングラーの分類体系」に従うと(YList(http://ylist.info)に解説があります)、「単子葉植物綱、サトイモ目、サトイモ科、テンナンショウ属」 というように、綱、目、科、属のそれぞれの「階級」で、所属する分類群が決まっていました。しかし、APG分類体系では、目より上のグループは、従来の「階級」をもった分類群ではありません。先ほど例として用いたユキモチソウは、「Monocots、オモダカ目、サトイモ科、テンナンショウ属」に属します。Monocotsは階級としての「綱」をもった分類群ではなく、系統樹の中でのまとまり(単系統群といいます)につけられた名称です。また、ユキモチソウの場合、所属する目が、サトイモ目からオモダカ目に変更されています。このように、目のグルーピング(つまり、どの目にどの科が含まれるかということ)が変更になっている例も多く見られます。また、科や目が無くなった場合(例えば、シラネアオイは、日本固有の科であるシラネアオイ科に属するとされたことがありましたが、APG分類体系ではシラネアオイ科は無くなり、キンポウゲ科に属しています)や、目よりも上にいくつものグループが存在する場合があります(例えばフジが属するマメ科は、APG分類体系では、「Eudicots, Core Eudicots, Rosids, Fabids、マメ目」 に属します )。
梶田 忠(琉球大学熱帯生物圏研究センター)
ご質問、ありがとうございます。植物の分類学をご専門とされている琉球大学の梶田忠先生にご回答いただきました。
【梶田先生からのご回答】
ご質問下さり、有難うございました。APG分類体系は、DNAの塩基配列を用いて推定された系統関係を反映するように作られた、被子植物の分類体系です。ようやく、一般書籍でも多く見られるようになりました。図鑑で用いられる科の配列が大きく変更されたり、これまでに慣れ親しんだ科の名前が消えてしまったりしていますが、最新の研究成果を基に作られた分類体系を見ると、仰る通り、わくわくしますね。2016年にはAPGIV(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/boj.12385)にアップデートされましたので、こちらもそのうち、ご覧になる機会があるかと思います。
さて、頂いたご質問には、以下のように答えさせて頂きます。最初の質問については、やや詳しい補足説明もつけておきました。
1. APG分類体系の導入で、日本固有種に対する見方は変化するか?: (回答)はい。「見方」の変化は、日本固有種に限らず全ての被子植物の全ての種で起こる場合があります。例えば、所属する科などの上位グループに、様々な変更が生じる場合があります。下記補足説明には、変更のいくつかの事例を挙げておきました。また、日本固有種の科についての変更をお知りになりたい場合は、「日本の固有植物」(加藤雅弘・海老原淳編 2011)」に個々の事例についての解説があります。あと、「見方の変化」という意味では、APG分類体系の導入によって、ある植物と他の被子植物との系統関係が、従来よりも分かりやすくなったということもできます。
2. APG分類体系の導入で、固有種が帰化植物や栽培植物に置き換えられる様なことがあるか?: (回答)ありません。分類体系が変更になったからといって、それぞれの種の分布や栽培の歴史などに影響はありません。
■補足説明: APG分類体系と従来の分類体系で生じ得る変更について、補足説明をしておきます。まず、従来の分類体系では、植物の種は階層構造(階級)をもった分類群の下で分類されていました。例えば、ユキモチソウは、従来の「新エングラーの分類体系」に従うと(YList(http://ylist.info)に解説があります)、「単子葉植物綱、サトイモ目、サトイモ科、テンナンショウ属」 というように、綱、目、科、属のそれぞれの「階級」で、所属する分類群が決まっていました。しかし、APG分類体系では、目より上のグループは、従来の「階級」をもった分類群ではありません。先ほど例として用いたユキモチソウは、「Monocots、オモダカ目、サトイモ科、テンナンショウ属」に属します。Monocotsは階級としての「綱」をもった分類群ではなく、系統樹の中でのまとまり(単系統群といいます)につけられた名称です。また、ユキモチソウの場合、所属する目が、サトイモ目からオモダカ目に変更されています。このように、目のグルーピング(つまり、どの目にどの科が含まれるかということ)が変更になっている例も多く見られます。また、科や目が無くなった場合(例えば、シラネアオイは、日本固有の科であるシラネアオイ科に属するとされたことがありましたが、APG分類体系ではシラネアオイ科は無くなり、キンポウゲ科に属しています)や、目よりも上にいくつものグループが存在する場合があります(例えばフジが属するマメ科は、APG分類体系では、「Eudicots, Core Eudicots, Rosids, Fabids、マメ目」 に属します )。
梶田 忠(琉球大学熱帯生物圏研究センター)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2016-05-25
出村 拓
回答日:2016-05-25