一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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バナナ果実などの湾曲について

質問者:   教員   バイオ
登録番号3472   登録日:2016-05-04
インターネット上で、バナナの果実の湾曲については、オーキシンによる屈性であるというコメントをみかけるのですが、学術的に確認されていることなのでしょうか。事実であれば、そのしくみを教えて頂ければありがたいです。また、キュウリの湾曲についてもどのようなしくみであるか教えて頂けないでしょうか。
バイオ様

質問コーナーへようこそ。歓迎致します。回答が遅くなってしまいました。バナナとキュウリの屈曲に関する植物ホルモン関係の研究論文を調べてみたのですが、これらの果実の曲がり(屈曲)とオーキシンとの因果関係を示す研究論文は見当たりませんでした。農業・食品産業技術総合研究機構の中山 真義先生のご紹介で、キュウリについては 東北大学大学院農学研究科園芸学研究室教授 金山喜則先生から以下のような回答をいただきました。金山先生の研究室では、前任の金濱先生の時代からキュウリの屈曲に関する研究を行っておられるます。「キュウリについては、曲がる外側の心皮が先に発育しており、内側がそこに追いつくのですが、光合成不足などで追いつけなくてまっすぐにならないというメカニズムです。」オーキシン等の関与については回答がありませんでしたが、おそらくそういった視点での情報は無いものと推察されます。
バナナでは、インターネット上で確かに [why are bananas are curved?] といった類の多数の質問に対して、バナナの曲がりは負の重力屈性によるものだという説明があり、オーキシンの関与に言及しています。しかし、直接的な実験的証拠に基づくものかどうかはわかりません。
一般に、植物の器官において屈曲が起きるのは、その器官の相対する面(左右、上下、裏表など)または相隣る組織や細胞層の間で成長速度に差が生じることが主な原因です。茎や幼葉鞘、根、葉などの器官で見られる屈曲は短期間で生じるのが普通で、この場合は細胞伸長(拡大)速度の差が原因で、オーキシンが関与することが知られています。短期間ではない成長に伴う歪みはそれほど単純ではないでしょう。多種子の果実の場合は、均等に種子形成が行われたかどうかも果実の形状に影響します。いずれにしても何らかのホルモン様物質が関与していると推測されます。
木本植物の幹や枝の場合は「しだれ(枝垂れ)」という現象があります。この場合は「あて材」という組織の形成が関わっており、ジベレリンが関与しています(登録番号3249)。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見  允行
回答日:2016-05-12
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