一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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雌雄異株植物の花序以外の組織の形態差

質問者:   一般   PAPYRUS
登録番号3473   登録日:2016-05-06
定年退職後に趣味で樹木の観察を始めた者です。
アオキの葉と枝を観察し、茎頂にある雄花と雌花の脇から伸びる二本の分枝の伸長度に差があることが分かりました。
詳細は次のブログを参照下さい。

http://blogs.yahoo.co.jp/ashikawapapyrus/14212516.html
http://blogs.yahoo.co.jp/ashikawapapyrus/12866500.html

昨年「イチョウの雌雄は葉で見分けられる」との話から、実際にイチョウの雄株と雌株の葉を比較しましたが、そのような事実は確認できませんでした。

http://blogs.yahoo.co.jp/ashikawapapyrus/13234340.html

イチョウの葉を確認した結果、植物の雌雄間で、花序以外の組織形態に差が生じることは無いだろと考えていました。

しかし今回、アオキ分枝の伸長度に性差があることが分かりました。また資料等を調べると雌雄異株の植物の一部にはXY染色体を持つものがあるようです。
更に、雌株では果実等が枝で成熟する事実等を考えると、雌株には雄株と異なる生理現象が起きている可能性があるだろうと考えるようになりました。
そこで質問です。
主に雌雄異株の植物で、雌雄性に起因する花序以外の形態、動態に差を認める事例は知られているのでしょうか。また、植物の雄株と雌株で、植物ホルモン等の作用に差を生じるような事例は知られてているのでしょうか。
中途半端な知識での質問かとは思いますが、どうぞ宜しくお願い致します。
PAPYRUSさん:

みんなの広場のご利用ありがとうございます。
植物の雌雄性は古来研究者の関心を集めてきた課題の一つです。両性花、雌雄異花、雌雄異株のほかそれらが混ざり合った種まで多くの植物の性発現の仕組みと雌雄の違いを明らかにしようとするするたくさんの観察結果、研究結果がありますが、多くに共通するような統一的解釈は今のところありません。ご質問の主旨「雌雄異株の植物で、雌雄性に起因する花序以外の形態、動態に差を認める事例は知られているのでしょうか」という点については、「たくさんあります」がお答えになります。ただし「雌雄性に起因する」ことまでの確認はほとんどされておらず「雌雄性と相関する」観察結果ということになります。雌雄異株植物の雌雄性は生殖器官(つまり花)ができてから分かるもので、それ以前の生育段階で雌雄の株を予測することは今のところできていません。そのため、雌雄の株の成長(一定年度後の樹高、樹形のちがい、シュートの出る量など)、種子発芽の早さ(後から雌雄が分かります)、切枝からの発根の早さ、耐病性などについてのちがいをアサ、アスパラガス、スイバ、ポプラ、アメリカハナノキなどなどで指摘する報告が多くあります。成長の早さ、生理的応答のちがいなどは調べる植物種によって雌雄の反応が違うこと、観察された違いが雌雄性に基づくかどうかの確認が困難なことから雌雄の形態的なちがいの一般的な傾向を求めることはできていません。
これらについて、非常のよくまとめられた総説があります。ご参考になるとおもいます。
David G. Lloyd and C. J. Webb:“Secondary Sex Characters in Plants”, The Botanical Review, 43(2), 177-215 (1977)
アオキで観察された現象はたいへん興味あるものです。調査する株数をもう少し増やし、統計的に雌雄性と相関があるかどうかは確認する必要を感じます。

雌雄によって植物ホルモンに対する応答性のちがいなどはほとんど調べられていません。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2016-05-09
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