一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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トマトのデンプン輸送について

質問者:   高校生   なかたたかな
登録番号3481   登録日:2016-05-20
デンプン輸送の際、ソースからシンクに運ばれると聞きました。
葉で作られたデンプンは、根では成長するエネルギーとしてそのデンプンを使用するのだと思うのですが、果実の場合は一度入ってしまったデンプンは貯蔵されたままになるのでしょうか?それとも一定まで貯蔵されると流れ出るなどといったことがあるのでしょうか?
詳しく教えて頂けると幸いです。
なかたたかな さま

本コーナーへのご質問、ありがとうございます。
ご質問の関連分野をご専門とされている名古屋大学の白武勝裕先生に回答していただきました。

【白武先生からのご回答】
回答の前に訂正ですが、ソースからシンクに輸送されるのはデンプンではなく糖(ほとんどの植物ではスクロース)です。葉において光合成により合成された糖は、芽や根などのシ
ンクに輸送されて成長に使われますが、種子やイモ(塊根・塊茎)においては糖からデンプンが合成されてデンプンとして蓄積します。果実においては、葉から輸送されてきた糖は、糖のまま果実に蓄積するか、糖からデンプンが合成されてデンプンとして蓄積します。果実に蓄積した糖が流れ出るかですが、流れ出る(果実から糖が植物体に戻る)というより、ある一定以上の量になると糖が果実に入らなくなると言った方が正確だと思います。

別の角度から回答します。種子やイモに蓄積したデンプンは、その後分解されて糖になり、新たな植物体の成長に使われます。一方、果実に蓄積したデンプンは、果実の成熟と共に分解されて糖となりますが、果実にデンプンや糖が蓄積するのは、果実を食べて種子を拡散してくれる動物や鳥のためであって、植物自身が使う目的ではありません。それ故、果実に蓄積したデンプンや糖が植物体に戻ることはほとんどないと考えられています。

 白武 勝裕(名古屋大学大学院生命農学研究科)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2016-05-23
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