一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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三葉松?

質問者:   一般   たろ
登録番号3497   登録日:2016-06-02
長野県中部の標高1900mほどの山に生えているマツです。

一見すると、風衝地に生える矮性のアカマツです。
しかし、ニ葉と三葉の葉が混在します。

二葉だけの枝もあれば、ニ葉と三葉が混じる枝もあります。
(三葉だけの枝は見当たりません)

場所から植栽されたものとは考えにくいですし、少なくとも、リキダマツやテーダマツではありません。

何らかの要因で、アカマツにこのようなことが発生することがあるのでしょうか?


たろ さん:

みんなの広場のご利用ありがとうございます。
回答は森林総合研究所の河原孝行先生にお願いし、次のようなお答えを頂きました。
世界的規模で動植物の移動が増加しているために異種間の交雑ばかりでなく環境変化による変異も加わるためにいろいろなことが生物界でも起きているようです。

【河原先生からのご回答】
 3葉松は北米、中国、ヒマラヤにそれぞれ分布しています。ご質問の中にあったリキダマツ・テーダマツもその1つです。3葉松は2葉松や5葉松のそれぞれ別の系統から独立に進化したことが知られています(Gernandt et al. 2005)。これらの3葉松にはしばしば2葉が混じることが知られます。たとえば、ウンナンマツは基本3葉ですが、2葉が混じります(Fu et al.1999)。 日本のクロマツとアカマツですが、それぞれ3葉が混じる変種が知られています(上原 1959)。3葉のアカマツはミツバアカマツと呼ばれ、「葉は屡々三葉束生し、アカマツより太い。群馬、栃木両県境にある袈裟丸山で古沢潔夫氏が発見した」と書かれています。3葉のクロマツはミツバマツ(別名三鈷松)と呼ばれ、野生で稀に見つかる以外に名木や盆栽になっているものもあります。三鈷松と称されるものの中には、クロマツでない外国産のものもあります。これもすべてが3葉というわけでなく、2葉も混在します。
 以上のように、2葉松と3葉松にはそれぞれ混在して葉をつける素質があると考えられます。今回質問者が発見されたものも、アカマツの中に見られるこの変異の1つと考えられます。

引用文献
Fu et al. (1999) Pinaceae, Wu CY et al.(eds.) Flora of China, 4, P11-52, Science Press Beijing
Gernandt DS et al. (2005) Phylogeny and Classification of Pinus. Taxon54(1): 29-42.
上原敬二(1959)樹木大図説、有明書房

 河原 孝行 (国立研究開発法人 森林総合研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関英雅
回答日:2017-02-01
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