一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の色素を残した液浸標本について

質問者:   教員   ミズホ
登録番号3513   登録日:2016-06-26
最近、ハーバリウムとして、植物の色素を残した液浸標本の商品が出回っていることを知りました。一年近くも色素や形態が保たれるそうです。
しかし、酢酸や無水エタノールを用いて作成した場合色素は残らないと思い、どのような液体用いて作成しているのか調べてもわかりませんでした。
可能であれば学校でもこのような植物標本を作成したいと考えているのですが、どのような液体の可能性が考えられますか?
グリセリンやシリコーンオイル、精油などを思いつきましたが、自信がありません。
ミズホさん:

みんなの広場のご利用ありがとうございます。

植物学では腊葉標本がふつうに使われているので液浸標本はあまり作りませんが、組織、細胞形態観察のための液浸標本(固定標本)を作ります。形態観察ですから元の形態が変化しないように組織を殺すため浸透力の強い液体、アルデヒド(フォルマリン)、酢酸、アルコールなどの混合液を固定液に使いますので、色素をはじめ低分子の水溶性物質はほとんど溶出あるいは変化してしまいます。顕微鏡観察のための液浸標本作成法では「色素を残した液浸標本」を作ることは困難(ほとんど不可能)です。

「植物の色素を残した液浸標本」とするものが市販されているようですが、その方法は開示されてはおらず、植物色素の性質を考えれば、作成の過程で安定な塗料で塗装、染色したものとしか推定できません。

商品開発の一端として保存方法はないかと思い特許情報を調べてみましたら、次のようなものがありました。いずれも、複雑な処理をするばかりでなく染色、媒染処理も視野に入れたものです。ご参考までに。これらの方法が、商品となり、学校教材用として利用できるようになるかどうかは分かりません。

1) 【発明の名称】植物の保存剤および保存方法
  【公開番号】特開平7-277901
  【公開日】平成7年(1995)10月24日
 http://www.geocities.co.jp/Technopolis/7491/pat.001.htm

2) 【発明の名称】植物体の保存処理剤
  【公開番号】特開2012-41323(P2012-41323A)
  【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
 http://www.ekouhou.net/%E6%A4%8D%E7%89%A9%E4%BD%93%E3%81%AE%E4%BF%9D%E5%AD%98%E5%87%A6%E7%90%86%E5%89%A4/disp-A,2012-41323.html
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2016-06-28