一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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カナメモチなどの若葉の赤色化について

質問者:   高校生   LGM
登録番号3516   登録日:2016-06-27
カナメモチなど若葉が赤色化しているのをよく目にしますがこれは紅葉と同じメカニズムなのでしょうか。異なったメカニズムの場合どのように調査すればよいのかお教え願います。また、カナメモチの若葉ではなく枯葉(赤)の色素を抽出したところ水溶性の黄色色素が観察されました。そのような色素は存在するのでしょうか。(油溶性の黄色色素ならたくさんあるのですが。)
回答のほどよろしくお願いいたします。
LGM さん

本コーナーをご利用くださり有り難うございます。

カナメモチの若葉が赤色化しているのはいわゆるフラボノイド色素(フラボン・アントシアニン)を蓄積しているためです。植物の若芽や若葉がアントシアニンを蓄積することはしばしば認められることで、一般には、有害な光線に対する光学フィルターとしての効果がその主な生理機能であるとされています。色素の蓄積は合成と分解の速度のバランスによって決まることになりますが、カナメモチの場合には品種によっては若葉だけでなく成熟葉においても大量のアントシアニンが含まれていて葉が桃色を呈している場合があり、園芸品種としての価値を高めているようです。報告によると、カナメモチは強光下でアントシアニンの含量を増やし、弱光下でクロロフィルなどの光合成色素を増加させるなど、光条件に合わせて色素の質や量を調節しているようです。

ところで、若葉におけるアントシアニンの蓄積と紅葉におけるアントシアニンの蓄積が同じメカニズムによるかとの問いですが、出来事としては「若葉の場合には、最初にアントシアニンの蓄積が進んでいて、やがて光合成色素の蓄積が追っかけるように進行して葉が緑化して行くのに対し、紅葉の場合には、光合成色素の分解と符合する形でアントシアニンの合成・蓄積が進み、葉が紅化して行く」道すじをたどるので、両者が同じメカニズムに基づいているとは言えないと思います。

脂溶性(油溶性・親油性・疎水性)分子であるクロロフィルやカロテノイドなどの光合成色素と、どちらかと言えば水溶性のフラボノイド色素は抽出条件を工夫することで分別して取りだして容易に分析できますので、両色素の蓄積の関係を調べることがメカニズム解析への第一歩となるのではないでしょうか。色素の抽出条件などについての議論を含めて、本コーナーには数多くのアントシアニンやクロロフィルに関するQ/Aがありますので、参考になさって下さい(アントシアニンの場合、例えば登録番号0425,2264,3254)。

カナメモチを観察していると葉に黄化している部分が見られることもありますが、この場合には黄化に関係している色素はカロテノイドのようです。しかし、ご質問にある「老化により紅化した葉(フラボノイドの蓄積によると思われる)から抽出される水溶性の黄色色素はカロテノイドではない可能性が高いように思います(水溶性のカロテノイドは非常に珍しいので)。この点に関しては、私には答えられませんので保留とさせていただきます。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2016-06-29
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