一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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オニシバリの落葉について

質問者:   会社員   グッチ
登録番号3526   登録日:2016-07-04
落葉樹は一般的に秋に落葉します。文献では、冬になると樹木の活動が低下して水の吸収が衰える一方で、外は乾燥しはじめ蒸散に耐えることができず、落葉させる・・・。しかし、オニシバリ(ナツボウズ)は落葉しますが、夏に落葉するのですよね。どうしてでしょう。冬に花を咲かすのは、競争が少ない時期を選ぶ(ヒイラギなど)のではないかと思いますが。夏は日差しが強いので、耐えきれないのでしょうか。化学的にうかがえればと思います。
グッチ さま

ご質問、どうもありがとうございます。樹木の生態をご専門とされている東京大学の舘野正樹先生にご回答いただきました。

【舘野先生のご回答】
 温帯に分布する常緑樹は、明るい場所で成長する機会はほとんどありません。明るい場所では落葉樹の成長が速く、常緑樹はどうしても落葉樹の林床に取り残されてしまうのです。このような常緑樹は、主に落葉樹の落葉期間に光合成を行うことになります。そのため、夏のある期間に落葉してもそれほど問題にはなりません。ということなので、オニシバリの夏の落葉はそれほど破天荒なことではないと考えられます。
 実は、葉の寿命が丸一年という常緑樹はかなり少なく、他にはクスがありますね。クスは春に落葉しつつ新葉を展開します。こうした葉の寿命の短い常緑樹は、常緑樹の中では葉が薄く、食害を受けやすい、強風に弱いという性質があります。そのかわり常緑樹の中では成長が速いグループに入ります。オニシバリもおそらくそのような葉の性質なのでしょう。
 一方、もっと葉の寿命の長い常緑樹(カシ、常緑針葉樹)などは葉がより厚く、葉が長持ちする代わりに成長が遅くなります。こうした葉の寿命の長い常緑樹は個体の寿命も長く、遷移後期種として森林の主な構成種となります。
 余談ですが、クスは山奥の自然の林で見ることはほとんどありません。クスの正体は未だに不明です。

 舘野 正樹(東京大学大学院理学系研究科)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-01-26
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