一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

ホウセンカの花の色について

質問者:   小学生   りょう
登録番号3539   登録日:2016-07-21
僕が学校で育てたホウセンカの花の色についての質問です。
同じ鉢に2本のホウセンカを植えて、大きくなりました。
そのうちの1本は白い花で、もう1本が赤に白い斑点ができたりしています。
花の色で赤と白が混ざったようになったのは、何故でしょうか?

本当は間引きして1本だけ植え替えるはずでしたが、根っこが絡んでいたので2本まとめて植え替えました。それも原因でしょうか?
りょう さん:

みんなの広場のご利用ありがとうございます。
小学3年のりょう さんに分かるように説明するのはかなりむずかしいことで次のようなお答えをしますが、分からない部分があったら遠慮なくこのコーナーに質問してください。

すべての生物は細胞(さいぼう)という小さなふくろのあつまりで、それぞれの細胞内には数万の遺伝子(いでんし)のセットがあります。同じ生物のすべての細胞は同じセットの遺伝子群をもっていて、その生物の形、色、行動などすべての生物のとくちょうはこの数万の遺伝子セットのはたらき方(数万の遺伝子のなかで働いている遺伝子、休んでいる遺伝子の組み合わせ)できめられています。ホウセンカの花びらも葉も細胞のあつまりでそれらの各細胞のなかには同じセットの遺伝子群があります。
それでは、同じ遺伝子セットを持つ細胞のあつまりなのに花びらの色と葉の色はどうしてちがうのでしょうか。花びらの細胞の中ではたらく遺伝子の種類が葉の細胞ではたらく遺伝子の種類とはちがうからです。

さて、ホウセンカの花びらの色はアントシアニンと呼ばれる色素で、この色素がつくられて色がつくのは色素合成を担当(たんとう)する遺伝子が働くからです。この色素合成担当遺伝子がはたらかなければ色素がつくられないので花びらは白くなります。次に赤い花びらのなかに白い斑点が入る原因を考えます。数万種類の遺伝子のなかには「いたずら遺伝子」もいます。この「いたずら遺伝子」は遺伝子群のなかを飛び回ってときどき他の遺伝子の中に飛び込み、その遺伝子の働きをとめてしまいます。ときにはまたそこから飛び出すこともあり、働きが止められていた遺伝子は再び働き出すこともあります(このようないたずら遺伝子をトランスポゾン──飛び回る遺伝子──と呼んでいます)。花びらはつぼみがごく小さいときにできはじめます。
花びらのもとになる細胞が細胞分裂を繰り返して花びら細胞を外へ外へと送り出します。赤い花びら細胞は色素をつくりますが、細胞がつくられる途中で「いたずら遺伝子」が動き出しこれがアントシアニンをつくる担当遺伝子のなかに飛び込むとその細胞は色素をつくれなくなるので白い斑点となります。たくさんの花びら細胞で飛び込めば斑点状になり、飛び込む時期によって白い筋がはいったりするものです。2本のホウセンカの根が絡み合うのは花の色変わりの原因にはならないと思います。

なお、この質問コーナーに花の色、模様、トランスポゾンに関するものが沢山あります。「アサガオ」、「トランスポゾン」、「アントシアニン」などをキーワードとして検索すると参考になるとおもいます。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-02-02
植物 Q&A 検索
Facebook注目度ランキング
チェックリスト
前に見たQ&A
入会案内