一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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有機栽培の栄養 糖、アミノ酸で吸収しているか?

質問者:   一般   つがね ようぞう
登録番号3548   登録日:2016-07-26
細胞壁を出入りできる分子の大きさに関わることでしょうが
有機栽培の場合 糖、アミノ酸のレベルで根から吸収される
のでしょうか?炭酸同化作用でできたデンプンは水にとける
糖になって全身に回ると思いますがそうすると糖は細胞壁を通過していることのなります。
葉緑素を持たないギンリョウソウは体内で有機物を作れないので外・根から有機物を取り入れていると思われます。
つがね ようぞう 様

ご質問をありがとうございます。

動植物に共通して細胞の内外を分ける限界膜としての「細胞膜(原形質膜)」と植物や菌類の細胞の細胞膜の外側に形成される「細胞壁」は用語として区別されます。質問文で使われている「細胞壁」は「細胞膜」に相当すると思われますので、そのような理解で回答させていただきます。

膜の基本的な性質は物質を通さないことですが、細胞膜には、組み込まれた装置(タンパク質などで構成)があって、場合によってはエネルギーを使って能動的に、あるいは濃度勾配に従って受動的に特定の物質を細胞内に取り入れたり、細胞外に放出する機能が備わっています。このような仕組みによって、外界から栄養分が吸収されたり、炭酸同化作用(光合成)の産物がショ糖などの形で「篩管」の細胞を通って貯蔵組織に輸送されることになっています。

独立栄養生物である植物は、外界から無機化合物を取り入れて生育するのが基本ですが、糖やアミノ酸などの有機化合物を細胞膜を介して細胞内に取り入れる能力も備えており、これが栄養摂取上で意味をもつこともあるようです。植物細胞のアミノ酸の取り込みに関する実験事実に基づいた説明が本コーナーの登録番号1155にありますので、ご一読下さい。

「有機栽培」と言う言葉は「有機化合物を栄養源とした栽培」との感じを与えます。
しかし、土壌中での有機化合物の安定性から考えると、主に起こっていることは有機化合物が分解されて生ずる無機化合物に依存する植物の生育で、有機栽培には別の効用があるのだと思います。

菌従属栄養と呼ばれ樹木の根に共生する菌類に寄生するギンリョソウなどの場合や、食虫植物と呼ばれ動物を消化してできる産物を摂取する場合に、どのような形で栄養分が吸収されるかは興味ある問題です。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2017-02-06
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