一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉水と見かけの光合成速度

質問者:   その他   園芸愛好家
登録番号3556   登録日:2016-08-01
 今年は猛暑が続くというので、鉢植えをやせさせないために、一般家庭でできる見かけの光合成速度を速くさせる方法を考えています。
 私は真夏に見かけの光合成速度を上げるため、正午前後に霧吹きで葉裏を中心に葉水をする方法を考えました。具体的には1分以内に渇く量の真水を噴霧し、乾いたらまた行い3,4回繰り返すというものです。理由は
一、気化熱で葉の温度を下げることで
1呼吸速度を下げる
2高温による酵素の不活性化を防ぐ
二、葉に水分を直接補給することで
1光合成や蒸散に必要な水を補給して蒸散量を低下させない
2直接補給で素早く葉の内部および葉緑体内の浸透圧を下げて光合成産物の流転を促す。
以上です。水滴が付着すると一時的には気孔が閉じて蒸散が止まりますが、すぐ乾くので問題ないと思っています。心配は
・葉がどれだけ水を吸うのか
・水を吸ったところで葉緑体に浸透するのか
・葉緑体に浸透した所で流転に十分な量なのか、流転速度は上がらないのではないか
・葉水のストレスでエチレン等が発生しないか
・もし見かけの光合成速度が増えた所で目に見える程の差が出るのか
などです。
 この真昼の葉水が見かけの光合成速度を早められるか以下の条件下でご意見頂戴したいと思います。
天気:終日快晴 最高気温:35度 湿度:50% 潅水(根水):十分 樹種:バラ科の高木、鉢植え
園芸愛好家 様

本コーナーをご利用くださりありがとうございます。

植物の葉に水を与える「葉水」の効果について、「見かけの光合成速度(純光合成速度,net photosynthetic rate)」をキーワードに、生理メカニズムに視点をおいて良く考察されていると思います(懸念される点をも含めて)。

葉水の効果は、大まかには、①物質としての水が細胞に供給されることの効果、②施された水の蒸発に伴う気化熱の吸収による葉温低下に起因する二次的な効果、③水をかけることによる洗浄効果の三つに分類できるかと思います。

例えば、②の結果として想定されている「呼吸速度」の低下や、①の結果として想定される細胞への水分補給の促進による「真の光合成速度(true photosynthetic
rate)」の増加などは、「見かけの光合成速度」を増加させるものとして期待をされることになりますね。勿論、これらの可能性は十分に考えられることではあると思います。一般的に、根がよく発達した植物においては根からの水分の供給が一番効果的であると思われますが、植物の種類(例えばある種の観葉植物など)によっては葉面からの水分補給が有効に行われる場合があります。

ところで、ご質問のバラ科の高木(鉢植え)の場合、一日3、4回程度の瞬間的な真水の噴霧だけでは規模の点において①と②による効果は殆んど得られないのではないかと想像します。③として挙げた「水をかけることによる葉面の洗浄」は光の供給やガス交換を改善することに役立ち、また、病原菌の除去などにもなりますので、持続的に効果をもたらす可能性があるように思えます。

見かけの光合成速度の増大の効果は、最終的には目的としている植物が「やせない」として確認できますので、適当な植物について、対照区(木)を設けて実験的に確かめられては如何でしょうか。

以上、個々の設問にはお答え出来ませんでしたが、お許しください。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2017-02-10
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