一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

チェックリストに保存

ケヤキ・ニレの仮軸分枝について

質問者:   大学生   tomo
登録番号3573   登録日:2016-08-14
初めて質問させて頂きます.

ケヤキやニレの木の枝はジグザグ状に枝分かれしています.
これは仮軸分枝によるものであるという記述を見ましたが,いまいち納得できません.
仮軸分枝は頂芽の生長が停止し,腋芽の生長が活発になることで起こる枝分かれですが,腋芽は頂芽と葉との間にできるのが一般的だと学びました.
しかしケヤキやニレの枝は,葉と,生長を受け継いだ枝("元"腋芽)との間に,生長を停止した"元"頂芽が存在するようにしか見えません.これでは腋芽が頂芽と葉の間につくという知見を当てはめることができないと思いました.

腋芽は頂芽と葉との間につくというのは必ずしも当てはまらず,ケヤキやニレでは腋芽は葉および頂芽の"外側"につく,というのが納得のいく説明なのですが,これで正しいのでしょうか.

ご回答お待ちしております.
tomo 様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。回答を基礎生物学研究所生物進化研究部門教授長の長谷部光泰先生にお願いしました。以下のとおりです。

【長谷部先生からの回答】
大学一年生とのこと、まず、ケヤキとニレが仮軸分枝と書いてある文献の信憑性を検討してみてください。インターネットの日本語ページの植物形態や分類に関する専門家でない方々の記述は間違いが多いです。日本語Wikipediaもたくさん間違いがあります。また、日本語の図鑑や教科書でもしばしば間違いがあります。英語のホームページや英語版wikipediaを参考にしながら真偽を推定するのが良いと思います。

「葉と、生長を受け継いだ枝("元"腋芽)との間に、生長を停止した"元"頂芽が存在するようにしか見えません」とのことですが、生長過程を継続して観察しましたか?本当に生長を「継いでいましたか」?つまり、春先に別の枝があり、その枝が生長しなくなるのを確認しましたか?あるいは、冬芽から生長するときに、冬芽は頂芽でしたか?秋に主芽が枯れて、春先だと腋芽が主芽に見える種類もあります。今の時期に冬芽の観察、春に新枝の観察をすれば、おのずと答えがわかると思います。

仮軸分枝は形態的にとても面白く、かつ、実はまだよくわかっていないことも多いです。コハコベ(http://www.nibb.ac.jp/plantdic/blog/?p=380)、ブドウ(http://www.nibb.ac.jp/plantdic/blog/?p=410)も観察してみると面白いですよ。

 長谷部 光泰(基礎生物学研究所生物進化研究部門)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2017-02-20