一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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適応放散について

質問者:   会社員   グッチ
登録番号3584   登録日:2016-08-25
アカガシについての記述を読む機会がありました。アカガシ系統はコナラ系統から適応放散したものとの記載がありました。もともと落葉については、熱帯にいた植物がより低温な地域に進出する際に、低温に耐えるために得た術と認識しています。つまり、常緑樹が落葉樹へ変化したと思います。一方で、アカガシ系統=常緑樹がコナラ系統=落葉樹から適応放散したということは、低温地域からより暖かい地域に戻ったということなのでしょうか?そうすると(正しい表現かわかりませんが)逆進化ということなのでしょうか。
グッチ さま

ご質問、どうもありがとうございます。樹木の生態をご専門とされている東京大学の舘野正樹先生にご回答いただきました。

【舘野先生のご回答】
 コナラのような落葉性のものからカシのような常緑性のものが進化したかどうかについては確固たる証拠がありません。分子系統樹を作っても、どちらが先なのかなかなか分からないことです。個人的には常緑→落葉という方が確からしいと思いますが、これも植物が南から北へと進出したということからの憶測に過ぎません。
 落葉性のものと常緑性のものは遷移段階で出現するステージが異なるため、どちらが先ということではなかった可能性もあります。同じ気候帯でみれば、落葉性のものは明るい場所での成長が速く、遷移の初期に出現します。一方、常緑性のものは落葉樹が落葉している期間の明るい林床を使って徐々に成長し、最終的には林冠に到達するという、遷移後期種であることが一般的です。コナラ林の林床にはカシの稚樹が多く見られ、着実に成長しています。このような生態的な特徴から見れば、進化の順序よりも最初から異なる戦略をもってほぼ同時に出現した可能性も考えられますね。

 舘野 正樹(東京大学大学院理学系研究科)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-01-26
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