一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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落葉樹の休眠について

質問者:   会社員   きくち
登録番号3600   登録日:2016-09-14
落葉樹が春になっても葉が出ず、枯れてしまったのかなと思って切ろうとしましたが、枝先や幹にはたくさんの小さな緑色の芽が秋までずっとついています。
以前落葉樹が春になっても目を覚まさない時があると耳にしましたが、そんなことはあるのでしょうか。
その木は来年の芽吹きの時期まで様子を見ようと思いますが、芽が出る可能性はあるのでしょうか。
きくち様

質問コーナーヘようこそ。歓迎いたします。 ご質問の落葉樹の種名は何でしょうか。また、樹木の大きさは。芽が開芽しなかったのは木全体ですか、一部の枝だけでしょうか。
文章からすると一本の樹全体だと理解します。一般に枝や幹に形成された一部の樹芽や花芽が開芽しないまま組織の中に埋没して長く残り、ある時何かの刺激によって活動を始めることがあります。 このような芽を潜(伏)芽と呼んでいます(登録番号1928を参照してください。)しかし、樹全体の芽が潜伏芽になってしまうことがあるのどうかはわかりません。もし、それらの芽が開芽しなかったら、樹は光合成でエネルギーを獲得することができず、はたして生き残れるかどうかはわかりませんね。 なぜ、形成された芽が開芽(成長の再開)しないのかを特定することは難しいと思います。ふつうの落葉樹は夏の終わりから秋の初めにかけて翌年の春に芽吹く芽の形成を終えます。その頃日長はだんだんと短日になって行きます、それとともに気温も徐々に低下していきます。このような環境条件が引き金となって、芽(花芽も)は成長を停止し、いわゆる休眠に入ります。芽の成長が抑えられてしまうのは植物ホルモンのアブシシン酸が増加するからです。アブシシン酸の作用の一つは成長を抑えることです。芽は普通硬い鱗葉に覆われて冬を越しますが、気温の低い冬の間に開芽が進むと、低温障害により芽は死んでしまいかねません。従って、休眠はある意味で寒冷期に生き残る手段でもあると言えましょう。また、一定の低温の期間を経ないと開芽に至らないこともあります。低温を経験している間に、開芽に必要な細胞活動の準備が行われるからです。春になり、気温が上昇すると開芽が始まりますが、この時アブシシン酸の量は減少しており、また、成長を促進する別の植物ホルモンのジベレリンなどが増えてくることもあります。潜伏芽は何らかの原因でこれらの道筋に添えなかったために起きる現象かと思われます。最近の温暖化で必要な低温経験ができなかったのかもしれません。そろそろ芽吹きが始まる時期ですね。ご質問の樹はどうなっているのでしょうか。
休眠などについては本学会編「これでナットク!植物の謎、講談社ブーバックスQ12を読んでください。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見  允行
回答日:2017-03-10
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