一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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クヌギは在来種か移入種か

質問者:   一般   ちょびん
登録番号3607   登録日:2016-09-26
クヌギは人の手の届く範囲にしかありません。
全ての原生林を見た訳では無いのですが、原生林でクヌギを見たことがなく、あるのは同じブナ科のブナの原生林です。
縄文時代にはクヌギのドングリの殻が見つかっていますが、食用にされたということは人の手を借りてやって来たのではないでしょうか。
クヌギは植林の際、選ばれる事が多いのですがそれが本当に日本本土で採取されたクヌギなのか、そもそもクヌギは日本原産なのか。
そのような曖昧な出自のクヌギを安易考えで植林するのは自然環境を守ることになるのか。
個人的にはクヌギは日本原産の愛される樹木であって欲しいです。
現在のクヌギの出自の扱いをご教授願います。
ちょぴん様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。確かにクヌギの原生林というのはないようですね。1つにはクヌギは非常によく人の生活に利用されてきた樹木だからかもしれません。昔はクヌギやコナラは雑木林を構成する主要な樹木で、薪炭との原料として欠かせないものでした。いわゆる里山のこれらの樹木は毎年伐採され、植林されてきました。大体20年サイクルで行われていたようです。他にシイタケ栽培の原木としてもつ使われれていましたね。古代人はドングリを食用に供していたようでもあります。そんなことから、クヌギという名前は「国の木」だとか「果の木」からとか転じてそう呼ばれるようになったいう人もいますが、確固たる証拠はありません。ただ古代から日本に住んでいる人にはとても馴染みが深い植物だったことは間違いないでしょう。現在は里山復元の活動によって盛んに植林が行われているようですが、これらの苗はドングリから
芽生えさせたものですから、外国産ではないと思います。クヌギがそもそもの初めから日本に自生していたにか、あるいはいつの時期かに外から持ち込まれたものかは正確には言えません。おそらくDNA解析をおこなって分子系統学的に調べればはっきりするでしょう。残念ながらそれに答える研究論文は見つかりませんでした。アメリカで広汎なクヌギの仲間 (Quercus 属)の解析をした例はありますが、日本のクヌギ(Quercus acutissima)の出自については何も情報はありませんでした。ということで、クヌギは古代から日本人の生活に密着してきたことを考えると、日本のクヌギは日本に自生していたものとみなしていいのではないかと思います。いずれにしろ分子系統学的研究がなされればはっきりするでしょう。

もう一つ別にいただいている質問(登録番号3606:水中化する植物体には一体何が起きているのか)は、現在専門の方に回答をお願いしていますので、しばらくお待ちください。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2017-03-08
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