一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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落葉植物と常葉植物の違い

質問者:   高校生   さわちん
登録番号3626   登録日:2016-10-31
以前、授業で落葉植物は離層と呼ばれるところから葉っぱが落とされると習いました。そこでふと疑問に思ったのですが、椿などの常葉植物では離層を作る必要が無く、それは何故なのかと思い、ここに質問させて頂きました。落葉植物が葉を落とさねばならない理由、また常葉植物が葉を落とさなくても良い理由などを教えて下さい。
さわちん さま

ご質問ありがとうございます。植物の生理生態学をご専門とされている東北大学の彦坂幸毅先生に回答をお願いしました。

【彦坂先生のご回答】
ツバキなどの常緑植物でも離層をつくり、落葉が起こります。常緑植物は葉を落とさないのではなく、一部の葉を落としても、他の葉が残っているために「常に緑」なわけです。多くの常緑植物では葉の寿命が数年に渡るため、「葉がない時期」がありません。

ただし、葉の寿命が一年程度、あるいは一年未満の常緑植物もいます。ユズリハは、葉の寿命がだいたい一年で、新しい葉が出終わると古い葉が落ちます。居場所を新しい葉に譲るため「譲り葉」なわけです。アオイスミレは、春になると新しい葉を作ります(夏葉)。夏葉は秋になると枯れますが、夏葉が枯れるちょっと前に小さな葉を出します(越冬葉)。越冬葉は春に枯れますが、その前に夏葉が出始めるということで、葉の寿命は一年に満たないのに植物個体自身は常緑です。

葉を落とさない植物は、少数ですが存在します。アフリカにいるウェルウィッチア(別名キソウテンガイ)です。これは裸子植物の一種で、二枚の葉を伸ばし続けます。葉の基部で細胞分裂が起こり、新たな組織が作り続けられます。二枚の葉は、個体が生きている限り存在するわけですが、実際には古くなった先っぽのほうから枯れていて、葉の組織は時間とともに入れ替わっています。

どうして葉(あるいは葉の組織)を入れ替えなくてはいけないのかは、はっきりとはわかっていないと思います。おそらく、細胞は何らかの原因で永遠に生き続けることはできないのでしょう。動物では新たに細胞をつくり、古い細胞を排除すること(アポトーシスなど)によって組織を維持できるのだと思いますが、植物では丈夫な細胞壁があり、組織を維持したまま細胞を入れ替えることはできません。このため落葉などによって組織ごと排除しているのだろうと思います。

 彦坂 幸毅(東北大学大学院生命科学研究科)
JSPP広報委員長
出村 拓
回答日:2017-03-01
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