一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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紅葉

質問者:   教員   ヘロ
登録番号3659   登録日:2016-12-22
理科の実験で、葉の断面の観察で、山茶花とともに、ニシキギの紅葉した葉も用いてみました。紅葉のしくみから、またネットに掲載されていた別の植物の画像からも、光合成組織の細胞でアントシアンが合成されて着色すると思っていたのですが、観察した葉の断面では、どう見ても表皮細胞が鮮やかな真っ赤にそまっているように見えました。葉の表も裏も赤い細胞がありました。赤くなっていたのは、表層の一層のみで、あとは、山茶花の切片と同じようにくすんだ緑色の細胞が並んでいました。使用したのはすでに離層が形成されて、ちょっと触れば落ちてしまうような葉です。
葉緑体がなく、光合成をしないと思われる表皮細胞がアントシアンを合成して赤くなることがあるのでしょうか。
ヘロ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。 紅葉の時の形成されるアントシアニンは確かに葉の表面に近い柵状組織に蓄積されるのが普通のようです。
しかし、植物の種類や年齢、部位、環境条件などによっては表皮細胞に蓄積されることもあります、珍しいことではありません。調べてみると、樹木の葉では大部分が柵状組織に蓄積するようですが、草本では表皮が普通のようです(紅葉とは関係はない)。環境条件が影響する場合は、例えば、秋に老化が始まった葉で、何かのストレスによってアントシアニンの蓄積が起きるのはほとんど表皮細胞であるという報告があります。また、秋の紅葉ではなく若葉が色づく場合は表皮細胞に色素が見られるという報告も多いです。他に、大部分は柵状組織・海綿状組織だけれども、一部表皮組織にもあるという例もありました。ということで、表皮細胞にアントシアニンが蓄積することは特に不思議ではありません。
ただニシキギはどんな条件でも表皮細胞にしか見られないのかどうかわかりません。ニシキギの葉のアントシアニンの局在を調べた研究は見つかりませんでした。また、そのアントシアニンはどこからくるのかもわかりません。柵状組織から輸送されるのか、アントシアニンの前駆体が表皮に輸送されて、そこで合成されるのか。

紅葉のメカニズムや形成されるアントシアニンの役割などについてはこれまでに沢山の質問があり、それぞれに対する回答が本コーナーに掲示されています。すでにチェックされていること思いますので、そのことの関連については触れません。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見  允行
回答日:2017-02-02
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