一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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フィトクロムと花芽形成について

質問者:   その他   りょうたろう
登録番号3664   登録日:2017-01-03
はじめてこちらに質問させていただきます。
大学受験に向けて生物を勉強している者です。
先日、とある大学の入試を解いたところ、シロイヌナズナにおける花芽形成とフィトクロムに関する問題があり、疑問に思う点があったためこちらのサイトを参照したところ約10年ほど前に似た質問があり、読みました。ただ、まだ理解に至らぬところがあり尋ねようと思った次第です。
私が解いた問題では、その与えられた実験の結果から考察するに、長日植物であるシロイヌナズナは適当な日長条件下では葉のフィトクロムが不活性化して花成ホルモンが合成され、花芽形成が促進されるというものでした。解答ともこの考察は一致してました。ただ、生物の資料集を何冊か調べてみるとどれも、長日植物はPfr型によって花芽形成が促進されると書いてありました。それでこちらのサイトを見つけ、似た質問を探したところ、フィトクロムには何種類かあり、それによって性質がかなり違うとのことでした。今回の問題も、資料集に記述されているフィトクロムと、その入試におけるフィトクロムは別の種類のものだと考えるべきなのでしょうか?御回答宜しくお願い致します。
りょうたろう 様

このコーナーを初めてご利用くださるとのこと、ありがとうございます。
ご質問にはフィトクロムに関する研究をしておられる京都大学の長谷先生がお答えくださいました。ご参考にしてください。

【長谷先生からの回答】
まず入試問題についてですが、書かれていることから判断するかぎり、実際の実験結果をもとに作られた問題と思われます。また「葉のフィトクロムが不活性化して花成ホルモンが合成され」という部分も、現在、専門家の間で広く認められている考え方に一致しています。以上のような意味で、この入試問題は「正しい」と言えます。

一方、「長日植物はPfr型によって花芽形成が促進される」という記述ですが、確かに、参考書などでそのような記述を見かけたことがあります。これは、長日植物とは(極端に単純化すると)「光が沢山当たると花が咲きやすくなる植物」であり、「光が沢山当たればフィトクロムはよりPfr型に変換されるはず」というような考えから出てきたのではないかと思います。しかし、少なくともシロイヌナズナでは、光を感じて花芽形成を早めているのは主にクリプトクロムと呼ばれる青色光の受容体です。

このコーナーの過去の回答にもあるように、実際の花芽形成の光制御は、複数の光受容体(最低でも、フィトクロム2種類、クリプトクロム、さらに比較的最近発見されたZTLなど)の関与に加えて、生物時計(概日周期)も関係するような複雑な現象です。そのような意味では、「長日植物はPfr型によって花芽形成が促進される」という記述は完全に間違いとは言えないものの、あまり適切ではないように思います。
以上です。

長谷 あきら(京都大学大学院理学研究科生物科学専攻植物学系・植物生理学研究室)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2017-01-24
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