一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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同じ種類の植物でも地域によって違いがありますか?

質問者:   自営業   あやととかづき
登録番号3667   登録日:2017-01-13
同じ種類の植物でも、その形態に地域差が生じていることがあるのは知られていると思います。

例えば、タイヌビエだったら、種子の形状にc型とf型が存在する地域に偏りがありますし、日長反応性にも地理的変異が確認されています。(論文を検索して調べました。)

今回は、とくにヒエ類(タイヌビエ、ヒメタイヌビエ、イヌビエなどなど) に関して、環境的な要因を除いて、地域の系統でなにか形態や生理的な特徴が無いか教えていただきたいと思い、投稿させていただきました。

こういった違いがある可能性があるというご意見でも結構です。

またヒエ類以外ではこういった違いがあるという知見でもけっこうです。

質問が多岐で申し訳ありません、よろしくお願いします。
あやととかづき様

ご質問ありがとうございます。
水田雑草の研究を専門とされている早川宗志先生に回答をお願いしました。

【早川先生からのご回答】
「ご指摘のように、同じ植物でも地域的差異が認められる種は多くあります。
ご質問のタイヌビエ、ヒメタイヌビエ、イヌビエなどの野生ヒエはノビエとも総称され、形態的な変異が大きいグループです。
野生ヒエは水田雑草の主要な種群でもあるため、水稲栽培における雑草防除の視点から研究が進められてきており、穂色、芒、出穂期、主稈葉数などに地域性があることが知られています。
例えば、芒は暖地産に無芒が多く、寒冷地産に有芒・長芒が多い傾向、穂色では高緯度に有色、低緯度に無色・淡色が多い傾向があります(永松1952)。
ご質問では、「環境的な要因を除いて」ということですが、その場合は環境選択圧に中立的と考えられている小穂のC型とF型の地域的分布が当たります(保田・中山2016)。
一方、出穂における日長反応性では高緯度地域のタイヌビエは低緯度よりも到穂日数が短くなるという地域性があることからも(Nakatani et al. 1998)、野生ヒエの地域性を考える場合には環境要因・非環境要因の両要因を含めて考えられると地域的変異の理解が深まると思います。」

 早川 宗志(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構中央農業研究センター)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野邦彦
回答日:2017-01-28
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