一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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ロマネスコという植物の形のメリットを教えてください

質問者:   小学生   山口です
登録番号3678   登録日:2017-01-31
植物に興味を持ち、インターネットで「面白い植物」と調べたところ不思議な形の植物が載っていました。それはロマネスコという植物で、フラクタルだとか黄金比だとか書いてありました。ではロマネスコの花蕾の形になにかメリットはあるのでしょうか?
山口です様

 ご質問有り難うございました。頂いたご質問の回答を東京大学の塚谷先生にお願い致しましたところ、以下の様な丁寧な回答をお寄せ下さいました。しっかり勉強して下さい。

【塚谷先生のご回答】 
 ご質問を拝見しました。
 ロマネスコは、昔からあるもので言うとブロコッリーとかカリフラワーの類ですね。さらにその大元をたどっていくと、青汁に使うケールなどの類になります。
 ブロッコリーもカリフラワーもロマネスコも、人間が改良に改良を重ねて、突然変異をたくさん蓄積させて作り上げた人工品です。あの食べるところは花のつぼみの元になる部分ですが、非常に小さいですよね。もともと菜の花やハボタンの花のように、真っ直ぐな茎のまわりに1つずつ順に花を並べて咲くタイプの植物だったのですが、品種改良の結果、その花のつぼみになるべきところに枝ができ、その枝の花のつぼみなるべきところに枝ができ、さらにそのつぼみができるべきところに枝ができ・・・・という繰り返しをやるようになってしまったのが、ブロッコリー、その程度の著しいのがカリフラワー、さらにもっと進んだのがロマネスコというわけです。ですからフラクタル構造になっているのですね。これでお分かりの通り、植物側のメリットは何もありません。人間が食べる場所が大きく発達し、しかも若くてみっしりした部分がたっぷりできるので、人間の側のメリットが高いだけです。
 実際、ブロコッリーはまだちゃんと花を咲かせることができますが、カリフラワーやロマネスコになると、ほとんど蕾が発達できません。枝分かれを繰り返してしまう突然変異を抱えているせいで、なかなか蕾が成熟できないのです。そのため、あの蕾の固まりができた後、育てていても、花はちらほらとしか咲きません。植物にとっては迷惑な話です。自然界では決して生き残れないでしょう。ただしその代わり、農家が丁寧に育てて種を取ってくれるので、個体の数としては十分この世の中で反映できる、というわけです。
 人間の都合で苦労させられる形になってしまった野菜としては、ほかにもキャベツやハクサイなどもあります。よく観察してもらうと、その奇妙さが分かるかと思います。
 なお黄金比の話は、茎のまわりに葉などが並ぶ時にしばしば見られる配置の話になります。これは別にロマネスコでなくても、身近な植物のほとんどが黄金比に近い配置を、茎のまわりの葉、枝などに見せていますが、これはこれで話が実は複雑なので、今回は省略させてください。

 塚谷 裕一 (東京大学大学院理学系研究科 教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2017-02-03