一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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紫や赤色の大根やかぶについて

質問者:   自営業   noi
登録番号3679   登録日:2017-02-03
こんにちは。
果実や野菜のアントシアニンの発現の理由の一つとして、
紫外線が強く、かつ、気温の低くなる秋にアントシアニンに紫外線を吸収してもらい、葉緑体が効率よく光合成できるようにするため、と学びました。
土の中(光合成をしない箇所)で大きくなるアントシアニンを含む紫大根や赤カブなどは、なぜアントシアニンを作るのでしょうか。
noi さん:

みんなの広場のご利用ありがとうございます。

植物におけるアントシアニンの役割について光合成との関係が重要なことは明らかです。その仕組みについては紫外線を吸収して紫外線の影響を妨げるものでもありますが、アントシアニン自体がポリフェノールですからいろいろな生化学反応で生ずる活性酸素を直接除去することも無視できません。光合成をしない動物でも活性酸素が生成されるので各種のポリフェノール物質(アントシアニンを含む)の摂取が活性酸素の毒性を軽減するとされています。赤カブ、紫ダイコン、ハツカダイコンなどのように非光合成器官でのアントシアニン蓄積が活性酸素を除く効果は十分期待できます。
しかし、アントシアニンを蓄積しないダイコン、カブなどはどうかと言う疑問が出ると思います。アントシアニン生合成経路で働く酵素、遺伝子のほとんどは明らかにされています。ことに遺伝子発現を制御する環境要因として光が重要ですが、影響する光の量、質(波長)は植物種によって大きく異なります。つまり光応答に関して多様性があることになります。リンゴ果実のように光を長時間照射しないと赤くならないものから、ソルガムのもやしのように赤色光を数分照射しただけでその後暗所においても真っ赤になるものまであります。また、ハツカダイコンでは、光よりも糖が生合成遺伝子の発現を制御している例もあります。アントシアニンが活性酸素の軽減に有効なことは確かですが、その生成、蓄積の有無、量などには植物種、品種、器官によって生合成遺伝子の発現制御様式に多様性があることによります。
このコーナーの登録番号1903, 2097は参考になると思います。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2017-02-06
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