一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物の根から出る老廃物とは?

質問者:   一般   ユウジ
登録番号3683   登録日:2017-02-04
最近、多肉植物の水耕栽培を始めました。
栽培方法を紹介するwebサイトなどをいろいろ読んでいますと、
よく「水替えは重要で頻繁に行うべき」と説明されています。
その理由は大抵、「根から老廃物が排出されており、その老廃物が成長に悪影響を及ぼす。」と説明されていました。
私の知識では、根は栄養や水を吸う部分であって、老廃物を出す部分だと思っていなかったので驚きでした。
ただ、どんな老廃物を出しているのかを説明しているwebサイトを発見することはできませんでした。

そこで質問です。
水耕栽培時、植物は根からどのような老廃物を出しているでしょうか?

よろしくお願いいたします。
コウジ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。水耕栽培で大切なことの一つは酸素の供給です。水耕の場合は根は培養液に溶解している酸素を取り入れて呼吸していますので、培養液を取りかえるか、エアレーションをしてやるのが望ましいです。それに、酸素が少なくなるとバクテリアが繁殖しやすくなり、根が腐ることもあります。根から剥離した細胞片やその分解物がバクテリアの栄養源になります。

根からは色々な物質が分泌されています。その中で興味ある物質はアレロケミカル(ALLELOCHEMICALS)と呼ばれる物質で、その種類は植物によって異なります。これらの物質は日本語では「他感物質』と言われ、植物の成長を抑制します。また、このような現象を「アレロパシー:他感作用」と言います。ある植物が根から他感物質を出すのはその周囲に他の植物が生育するのを抑えるためと言われてます。例えば、セイタカアワダチソウという外来の植物があり、これが繁殖するとだんだん他の植物がやられてしまい、植生に大きい影響を与えるので問題になっていました。この植物の他感物質は「cis-デヒドロマトリカリエステル」と同定されました。ところが最近、セイタカワダチソウの繁殖が減少していることが観察されています。それはいわば自家中毒が起きているのだろう考えられます。このような自家中毒の現象はある種の作物の栽培でも見られる現象で、昔から「忌地」として知られてきました。つまり、連作をすると生育が悪くなるということです。他感物質は根から分泌される物質だけでなく、生葉から蒸発されるテルペンの仲間の物質とか、落葉の分解物などに含まれる物質の場合もあります。(質問コーナー登録番号3146, 3280を参考にしてください。)なお、他感物質は老廃物ではありません。もっと積極的な意味を持った生理活性物質と言えます。
多肉植物が根から他感物質を分泌しているという報告は見つかりませんが、調べられていないだけで実際にあるかもしれません。しかし、いずれにしろ培養液を適度に交換することは健全な植物の成長を得るためには必要なことです。
jsppサイエンスアドバイザー
勝見  允行
回答日:2017-02-06
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