質問者:
高校生
鈴竹
登録番号3691
登録日:2017-02-20
SSHの活動の一環で、赤色光、青色光、白色光で、それぞれ光量子束密度を等しくして、同じ大きさの段ボール箱の中でウキクサとオジギソウを育てる実験をしました。その結果としてウキクサの葉の枚数が、赤色光<白色光<青色光の順で多く、オジギソウでは白色光のほうがより成長していました。しかし、なぜこのような結果になったのかがよくわかりません。教えていただけるとありがたいです。
みんなのひろば
光の色による植物の成長の差について
鈴竹さん
「光量子束密度を 等しくして実験する」とありますが、きちんとした実験計画に基づいて実験をしていることが伺えます。
「回答」
光合成に利用できる波長(約400-700nm)の光(これを光合成有効放射と呼ぶ)が光合成色素系に吸収されると、光子(光量子ともいう)あたりほぼ同じ効率で光合成に利用されます。したがって、質問者が3種の光源を用いて光量子束密度を等しくして照射し、同じ生育速度を期待したことは理にかなっています。(「照射光子あたりほぼ同じ効率で光合成に利用される」と書きましたが、厳密に言うと、緑色光は葉に吸収されにくいのでやや効率が下がります。また、2つの光化学系のうち、光化学系IIは約650nmに光化学系Iは約680nmに吸収帯があるため、約670nmよりも長波長の赤色光だけで励起した場合は光合成の効率が低下します。非光合成色素のアントシアンに吸収された光や、光合成系につながらない一部のカロテンに吸収された光は、光合成に利用されず、効率が下がります。なお、これらのことは、この質問には直接関係はないように思われます。また、植物によっては、高強度の光を照射したとき、特に青色光により障害を受けるものもあるでしょう。)
鈴竹さんが波長の異なる光の光量子束密度光子強度をそろえて植物に当て、生育を見ようという実験計画を立てたことはもっともですが、「吸収された光子は波長に関係なくほぼ同じ効率で光合成に利用される」というのは、測定時間が数時間程度の短い実験の場合です。植物は、光を光合成のエネルギー源として利用するばかりでなく、生育の調節や様々な環境応答にも利用しています。たとえば、赤色光や近赤外光に応答するフィトクロムがあります。青色光を吸収する色素タンパク質にはホトトロピン(気孔の開閉や葉緑体の細胞内における定位運動などに関係)、クリプトクロム(胚軸伸長の抑制などに関係)、植物の概日時計の光受容に関係するフラビンタンパク質(青色光を吸収)などが知られています。鈴竹さんが用いた赤色光は後者の光受容体を励起しないので、数日を超えるような実験では、植物に何らかの不具合が生じたと考えられます。ちなみに、人工光源を用いた植物工場では、多くの場合、赤色光にその約数分の1の強度の青色光を加えています。
鈴竹さんがやった実験を発展させ、白色光、青色光に加えて、例えば、次のような実験をやると面白い結果が得られるかもしれません:
1)赤色光だけを照射、
2)赤色光を数分の1だけ減らし、それを補うように青色光を加えて照射。
以上
「光量子束密度を 等しくして実験する」とありますが、きちんとした実験計画に基づいて実験をしていることが伺えます。
「回答」
光合成に利用できる波長(約400-700nm)の光(これを光合成有効放射と呼ぶ)が光合成色素系に吸収されると、光子(光量子ともいう)あたりほぼ同じ効率で光合成に利用されます。したがって、質問者が3種の光源を用いて光量子束密度を等しくして照射し、同じ生育速度を期待したことは理にかなっています。(「照射光子あたりほぼ同じ効率で光合成に利用される」と書きましたが、厳密に言うと、緑色光は葉に吸収されにくいのでやや効率が下がります。また、2つの光化学系のうち、光化学系IIは約650nmに光化学系Iは約680nmに吸収帯があるため、約670nmよりも長波長の赤色光だけで励起した場合は光合成の効率が低下します。非光合成色素のアントシアンに吸収された光や、光合成系につながらない一部のカロテンに吸収された光は、光合成に利用されず、効率が下がります。なお、これらのことは、この質問には直接関係はないように思われます。また、植物によっては、高強度の光を照射したとき、特に青色光により障害を受けるものもあるでしょう。)
鈴竹さんが波長の異なる光の光量子束密度光子強度をそろえて植物に当て、生育を見ようという実験計画を立てたことはもっともですが、「吸収された光子は波長に関係なくほぼ同じ効率で光合成に利用される」というのは、測定時間が数時間程度の短い実験の場合です。植物は、光を光合成のエネルギー源として利用するばかりでなく、生育の調節や様々な環境応答にも利用しています。たとえば、赤色光や近赤外光に応答するフィトクロムがあります。青色光を吸収する色素タンパク質にはホトトロピン(気孔の開閉や葉緑体の細胞内における定位運動などに関係)、クリプトクロム(胚軸伸長の抑制などに関係)、植物の概日時計の光受容に関係するフラビンタンパク質(青色光を吸収)などが知られています。鈴竹さんが用いた赤色光は後者の光受容体を励起しないので、数日を超えるような実験では、植物に何らかの不具合が生じたと考えられます。ちなみに、人工光源を用いた植物工場では、多くの場合、赤色光にその約数分の1の強度の青色光を加えています。
鈴竹さんがやった実験を発展させ、白色光、青色光に加えて、例えば、次のような実験をやると面白い結果が得られるかもしれません:
1)赤色光だけを照射、
2)赤色光を数分の1だけ減らし、それを補うように青色光を加えて照射。
以上
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2017-02-27
櫻井 英博
回答日:2017-02-27