一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物の体温調節

質問者:   中学生   デカピヨ
登録番号3698   登録日:2017-02-27
夏休みの自由研究で朝顔の観察をしました。
緑色の折り紙で朝顔の葉を作り本物の隣に並べ、学校で借りたサーモグラフィーで表面の温度を測りました。折り紙は温度が高くなりましたが、本物の葉はそれほど温度が上がりませんでした。葉の蒸散による気化熱で植物は体温調節しているのだと思い、吸水量と気温に関係があるか調べました。夜間や雨の日は吸水しないこと、気温が高くなるにつれて吸水量が増えることは分かりましたが、吸水量と気化熱の計算の仕方がわかりませんでした。気温31度で1時間に69グラムの水を吸い上げました。全ての葉の面積の合計が3911センチ平方メートルのとき、朝顔は体温を何度下げたのでしょうか。どうやって計算したらいいのか教えてください。
また来年同じような実験をするときはどんなことに気をつけたら、植物が蒸散によって体温調節していることを証明できますか。よろしくお願い致します。
デカピヨさん

質問オーナーへようこそ。歓迎いたします。難しい問題に取り組んでいますね。植物は動物(定温動物)と違って体の温度を一定に保つ機能を備えていません。その代わり、それぞれの植物によって異なりますが、ある温度範囲では生命活動の維持が可能です。そして温度がかなり低くなった時や、高くなった時にそれぞれある程度持ちこたえられるような仕組みも持っています。(登録番号2473など)。すでに勉強されているように葉からの蒸散作用は植物が高温にさらされた時に体の温度を下げるのに役立っています。ただし、蒸散作用はそのためだけに機能しているのではありません(質問コーナーを検索してください。)そこでご質問についてですが、蒸散量から体温の低下を直接計算する方法はありません。この問題は植物における熱収支というちょっと難しい事柄に関係しています。実際にどんな風にアサガオ使って実験されたのかわかりませんが、植物が自然の状態で、体温に影響を受ける要因は大小たくさんあります。直立型かほふく型かなどといった植物全体の形、個々の葉の面積、気孔の分布と数、葉の付いている角度、葉面の構造(毛があるとか)などなどの植物側の要因と光(光度、波長など)、気温。湿度、風、空気の流れ、土壌の保水量などなどの外的要因を考えなければなりません。大ざっぱに言って、植物が日中太陽光を浴びている時には二つの要因、すなわち顕熱と潜熱の収支が大きい要因となるでしょう。顕熱というのは空気の流れなど(風など)によって熱が暖かい方から低い方へ移動して場合(ケトルの水を沸かす場合なども)、潜熱は蒸発(気化:気化熱、蒸散はこれです)や融解(融解熱)で失われる熱のことです。あなたの実験の場合一時間で69gの水が吸収されたのですから、仮にその水のほとんどが気孔からの蒸散や体表からの単純な蒸発で失われたとすると,その量の水の気化熱を計算し、水1gを1℃下げるのに必要な気化熱の値から低下温度は計算できますが、それは他に熱収支に影響する要因が全くない時のことです。陽が当たっていれば、絶えず熱が加えられているわけですし。
一番確かなのは直接葉温を測定することです。幾つかの葉にセンサーを付けて測定して平均を取れば大体の温度変化はそれで推定できるでしょう。
蒸散の実験は登録番号0841を参考にしてください。水の気化熱の値などはせっかくの実験ですから自分で調べて見てください。ネットでも参考になる項目は多々あります。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2017-03-03